AIでCAE業務が爆速に!? サロゲートモデルが熱いAI記者がまとめるモノづくりトピックス(1/2 ページ)

製品開発のスピードと精度の両立を目指し、AI(人工知能)によるCAEの高速化技術が注目されている。

» 2025年05月30日 19時00分 公開
[MONOist]

 製品開発のスピードと精度の両立を目指し、AI(人工知能)によるCAEの高速化技術が注目されている。国内企業や大学による最新の研究開発が進展し、開発プロセスを大きく変革しようとしている。

汎用PCでCAE解析結果を高速予測、トヨタシステムズの「3D-OWL」

 トヨタシステムズは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、3D形状を認識して製品性能をAIで迅速に予測するシステム「3D-OWL(3D Operation with Learning)」を紹介した。同システムは、トヨタ自動車、トヨタシステムズ、東京大学による共同研究の成果をベースとしており、CAE解析の結果を高速かつ高精度に予測可能である(詳細はこちら)。

トヨタシステムズは「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」で「3D-OWL」を訴求していた トヨタシステムズは「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」で「3D-OWL」を訴求していた[クリックで拡大]

 同システムの最大の特長は「Depth Map(距離画像)」と呼ばれる手法により、大容量となりがちな3D形状(メッシュ形状)データを、軽量な2D画像として扱える点にある。さらに、東京大学が特許を保有するDepth Map処理に特化した形で拡張された「ガウス過程モデル」を機械学習アルゴリズムとして適用することで、高精度な予測を実現している。

 実際に3D-OWLを活用すれば、メッシュ数1.7億に及ぶ大規模な自動車モデルの空力解析において、従来は約16.3時間を要していた処理が、CAEの実行なしに約1分で予測可能となる。

サロゲートモデルの受託開発サービスが登場

 アラヤは、少量の学習データでも高精度な予測が可能なサロゲートモデルを比較的短期間で構築できる「AI活用サロゲートモデル受託開発サービス」の提供を開始した。CNNやGNN、Transformer、物理法則を組み込んだ既存の高度なサロゲートモデルを活用/カスタマイズすることで、さまざまな製品の性能を効率的に評価することが可能である(詳細はこちら)。

アラヤは「AI活用サロゲートモデル受託開発サービス」の提供を開始した アラヤは「AI活用サロゲートモデル受託開発サービス」の提供を開始した[クリックで拡大] 出所:アラヤ

 CAEとAIの領域にまたがる高度な専門性を持つエンジニアが同社にはそろっており、長年にわたって蓄積されたCAE解析ノウハウと先端AI技術の統合により、従来の手法では見落とされがちだった多面的な知見を抽出し、高度な予測精度とプロセス自動化を実現する。さらに、コンサルティングから実装、運用に至るまでをワンストップで支援し、現場の課題に即したAIソリューションの設計/開発/導入を可能としている。

ダイキンが圧縮機設計の効率化にAI-CAEソリューション活用

 ダイキン工業は、RICOSのAI-CAEソリューション「RICOS Lightning」を導入し、圧縮機設計の効率化を進めている。従来、解析に数日を要していた複雑なシミュレーションを予測ベースで数分に短縮できる点を評価し、採用するに至った(詳細はこちら)。

 RICOS Lightningに搭載されているAIアルゴリズム「IsoGCN」は、3D空間上の流れや圧力、温度といった物理量を高精度で予測可能で、流体解析、熱解析、構造解析などに対応する。従来CAEで必要だったメッシング作業も不要とされ、設計者やデザイナーでも利用しやすい。

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