連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説する。連載第11回はFA業界の主役部品の一つである「モーター」に焦点を当てた、「誰も教えてくれない設計NGあるある【モーター編】」をお届けする。
本連載は、前回シリーズ「いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い」をイントロダクションと位置付け、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説していきます。
FA(ファクトリーオートメーション)領域における設計は、いわゆる「工程/作業の自動化」を主なゴールとして、機械を作っていく仕事となります。その際、人間が行っていた作業を自動化する上で、特に頻繁に使われる部品が「モーター」です。
モーターは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するだけでなく、他の機械要素と組み合わせることで直進運動や、より複雑/精密な動作を実現できるため、FA業界では主役部品の一つといえるほど重要な役割を果たしています。機械の規模が大きい場合には、1台に数十〜数百個ものモーターが使われることも珍しくありません。
このように、機械にとって「基本中の基本」ともいえるモーターですが、筆者がこれまで多くの機械を見てきた中で、NGなモーターの使い方をしているケースにたびたび遭遇してきました。
モーターは機械を駆動させるために必要な部品であり、設計で不具合を発生させてしまうと、最悪の場合、機械が全く動かなくなることもあります。モーターは機械の要であるため、モーターが動作しなければ機械は本来の機能を果たせず、生産がストップしたり、自動化を諦めて結局人手作業に逆戻りしたりといった事態に陥りかねません。また、モーターの不具合によっては、現場作業者が危険にさらされる恐れもあります。
そこで今回は、モーターを使った機械の設計の中から、NGな設計例をいくつか紹介します。ぜひ、日々の設計の参考にしてみてください。
外観からは見えませんが、実はモーターの内部にはモーター軸を支持するための「ベアリング(軸受)」が内蔵されています。そのため、モーター軸にそのまま歯車やプーリーなどを取り付ければ、回転力を伝達させることが可能です。
しかしながら、モーター内部のベアリングに過大な負荷がかかる設計は避けるべきです(図1)。具体的には、以下のようなケースが該当します。
このような設計では、モーターのベアリングが早期故障してしまいます。そもそもモーターに内蔵されているベアリングの役割は、基本的に「モーター軸自体の負荷を支えること」であり、大きな負荷を受けることを前提とした設計になっていません。
万が一、モーター軸にたわみが生じてしまうと、回転精度が悪化したり、激しい振動が発生したりしてしまいます。また、最悪の場合はベアリングが焼き付いたり、破損したりする恐れもあります。そのため、大きな負荷が想定される場合には、負荷軸用のベアリングを別途設ける必要があります(図2)。
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