多くの場合、3Dプリントしたい形状のベースとなる3Dデータは、有償/無償に関わらず3次元CADやCGツールで作成されると思います。しかし、作成された3Dデータのファイル形式―― 例えば3次元CADの場合ですと拡張子が「*.prt」「*.catpart」「*.ipt」「*.123dx」など ――のままでは、直接3Dプリンタで扱うことはできません。
また、最近話題のクラウドベースの3次元CADである「Autodesk Fusion 360」や「Onshape」などは、ファイル(3Dデータ)をクラウド上にアップロードするのが前提であるため、ローカルPCに保存することはあまり想定されていません(種類によっては[保存]ではなく、[エクスポート]により固有のファイル形式、またはCADの世界でよく用いられる「IGES」や「STEP」のような中間ファイルとして保存することも可能です)。
3次元CADやCGツールに代表されるモデリングソフトウェアで作成された3Dデータは、3Dプリンタで取り扱うことのできるファイル形式に変換する必要があります。3Dプリンタで扱えるファイル形式には幾つか種類がありますが、現在のところ「STL(Standard Triangulated Language)」というファイル形式(*.stl)が標準的に用いられています(CG系のツールの場合「OBJ」という形式が有名)。
STLは、一般的なCADデータとは異なり、モデリングされた3次元形状を三角形(ポリゴン)の集合体で表現したデータ構造で、個々の三角形の頂点の座標と、単位法線ベクトルの情報を持っています(図5)。エッジや面という位相の概念はなく、CADのように平面、球面、円柱面といった情報も保持していません。
3Dプリンタの存在が今ほど広く一般に知れ渡る前から、STLは「切削加工」などの用途で使われており、3次元CADの世界ではよく知られているファイル形式の1つです。今では、ほとんどの3Dプリンタ用ソフトウェアで、STLを入力データとして扱うことができます。
3Dプリンタ用ソフトウェアのイメージをつかんでもらうために、一例として3D Systemsの3Dプリンタ「Cube」用のアプリケーション「Cube Print」を紹介します。
過去の連載記事「ミニチュア折りたたみ椅子を3Dプリンタで出力しよう」の中で、Cube Printを紹介したことがありますが、その時点からアップデートされているようです(図6)。Cube Printは公式サイトからダウンロード可能です。
STLファイルは、「ライブラリ」に追加することで3Dプリントの対象になります(図7)。
次に対象を選択して、[PRINT NOW]ボタンを押すと、3Dプリンタの準備画面に遷移します(図8)。
STLモデルが表示されている画面上で対象のモデルを選択し、造形ステージに対して配置を変更(移動・回転・拡大/縮小)することができます。本稿の前半で説明した通り、FDM方式の3Dプリンタでは、積層方向が重要になりますので、必要に応じてここで調整します(図9)。
配置と設定が完了したら、印刷(3Dプリント)を実行できます。
さて、今回の内容は以上となります。次回は、STLモデル(=3Dデータ)を実際に3Dプリンタで立体物として造形し、その後どのように仕上げ処理を行っていくかについて解説したいと思います。お楽しみに! (次回に続く)
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