「3Dプリンタ」という言葉と出会うと、「CAD」「3Dデータ」という言葉にも遭遇します。さて、それが一体何だか分かりますか?
今や3Dプリンタは家電量販店やDIYショップで見かけるようになり、製造業の方以外の認知度も非常に高まっています。ご存じの通り、3Dプリンタを使うには、3Dデータが必要です。そして3Dデータを作るためには、CADやCGソフトが必要です。そういわれても、何が何だか分からないという方もいらっしゃると思います。
今回の記事では、製造業のエンジニアさん以外の方にも分かりやすいように、モノづくりに使う3DデータやCAD(キャド)のことについて、よく出てくる言葉を中心に、初心者向けとして、なるべくやさしく説明していきます。
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3D(3次元)データは文字通り、縦横高さの情報を持つ立体(3次元)のデジタルなデータのことです。3DデータはCADやCGツール(詳しくは後述)などのモデリング専用ソフトを使って作成します。
3Dデータにもいろいろな種類があります。ここでは、3Dプリントなどモノづくり関連ということで、以下の4種類だけ覚えておいてください。
形状の点と稜線(エッジ)のみのデータで、初期の3D CADからのデータ形式です。現在の機械系3D CADではサーフェスやソリッド(後述)の表示方法の意味として使われます。
曲線の集合で面を定義する「皮だけ」のデータです。皮で閉じられた形状の中身は空っぽで、体積や質量の概念がありません。曲面や曲線を多用する工業デザイン(クルマのボディとか)など意匠設計、複雑な形状を扱う金型設計でよく使います。部品を組み立てた状態の表現(「アセンブリ」といいます)や、人や動物など有機的な形状作成は苦手です。
モノづくりの現場では欠かせない、体積や質量の概念がある「中身が詰まった」データです。工業製品の機構設計などで使います。部品を組み立てた状態のモデルを作るのが得意です。複雑な曲面や曲線の処理はあまり得意ではありません。
線で構成した多角形の集合で形状を作るデータです。サーフェスの一種です。人や動物など有機的な形状作成が得意です。用途やデータ形式は非常にさまざまです。ゲーム開発、フィギュア作成、構造や流体の解析、3Dプリントなどさまざまな場面で使われます。
ソリッドとサーフェスは3D CADで作成・編集ができます。サーフェスは3D CGソフトでも作成できます。
複雑な形状や曲面を扱う場合は、ソリッドモデリングよりサーフェスモデリングの方が向いていることがあります。またサーフェスモデリングよりソリッドモデリングの方が比較的習得が容易です。手っ取り早く3Dモデリングを覚えたい人はソリッドモデリング、将来、真剣に3Dモデリングと向き合いたい人はサーフェスモデリングから入るのがよいかもしれません。
サーフェスからソリッドに、ソリッドからサーフェスに変えることは3D CADで比較的簡単にできます。ただしサーフェスをソリッドにしたい場合は、“皮”が完全に閉じられていて、一切穴が開いていないことが条件です。肉眼で穴が見えなくても、計算上で「穴が開いている」と見なされることもあり、デリケートな作業になることがしばしばあります。
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