「自動運転のための自動運転は無意味」、国内5社の車両開発責任者が激論:オートモーティブワールド2016 特別講演レポート(5/5 ページ)
特別講演の後半では、自動運転や電子制御の話題から離れ、マネジメントも含めたクルマづくりという仕事への取り組み方について、会場に集まった若手エンジニアに向けたアドバイスがあった。
本田技術研究所の椋本陵氏。本田技術研究所創立50周年を記念した社内の新商品提案企画コンペでグランプリを獲得したことがきっかけとなり、2011年より栃木研究所に転属し「S660」の開発を担当した
パネリストのうち最年少である本田技術研究所の椋本氏は、社内公募でS660のアイデアを出し、優秀作品として選ばれたことから開発を担当することになった。同氏によれば「最初は目標を決めるのがなかなかうまくいかなかった」という。小さなスポーツカーを作ることは決めたものの、「小さなスポーツカーの魅力とは何か」を探すところがスタート地点だった。
アドバイザーとして経験豊かな年配の社員も付いたが、公募で集めたメンバーはほぼ全員が経験の浅い若手。まずは全員がさまざまなクルマに乗り、自分たちが目指すクルマを大勢が本音でワイワイガヤガヤと話し合う、同社の伝統でもある「ワイガヤ」で決めた。同氏は「愛車の“愛”って何なのか、ということも5年前に議論になった」といい、「答えは明確に出ていないが、そういう本質の部分まで話をして」構想を練った。
結果、そのクルマでどんな価値を提供するのかを考え、それを達成するためにどんな機能が必要なのかを決めていく手法でS660の開発を進めてきた。開発の早い段階で、生産委託することになる八千代工業の工場にクレイモデルを持って行き、現場のスタッフに「一緒に作っていきたい」と訴えたことにより、一層協力的に動いてもらえたことも大きな力になったと述懐した。
「S660」の外観デザインスケッチ (クリックして拡大) 出典:ホンダ
最後に、マツダの山本氏は若手エンジニアに向けて「どんな分野でも“世界一を目指そう”と思うこと。夢中になれば自然に身体が動くのではないか」とアドバイス。日産自動車の東倉氏は「われわれが作るのは道具であって、自分が開発したものがいいものかどうか決めるのはお客さま。専門部署で顧客動向を分析していたりもするが、本当にお客さんが喜んでくれているのかを自分で腑に落ちるまで考えること。そうでないと、どこかで路頭に迷うことになる」と語った。
最後には来場者からの質問も幾つか受け付けた
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