モデレーターを務めたコラムニストのフェルディナント・ヤマグチ氏は、ここで自身がシリコンバレーの企業に勤める知人から伝え聞いたという話を紹介した。
公道を実験走行しているGoogleの自動運転車に向けてダンボールで作った「STOP」の標識をいきなり掲げ、車両を停止させるという「近所の悪ガキども」によるいたずらが流行っているとのことで、自動運転の完璧な実現にはまだまだ課題が残されているのではないかと疑問を投げかけた。
これに対しトヨタ自動車の矢口氏は「自動運転車は法規通りに走る。ところが、それぞれの町にはクルマの流れがスムーズになるための(一般の交通ルールから外れた)ローカルルールみたいなものがある。そこに自動運転車のような異端児がいると、そのために渋滞や事故が起こることがある」という問題点も合わせて指摘した。
またマツダの山本氏は、Audi(アウディ)がかなり以前から取り組んでいるとされるパイロンスラロームのタイムアタックを行う自動運転車について、一定条件下では一般ドライバーをはるかに超えるスピードで走行できるものの、パイロンの位置を変えただけで正しく自動運転ができなくなったというエピソードを披露した。
「運転中はさまざまなシチュエーションで、いろいろなところが刻々と変化している。それを考えながら人間は走っているということを絶対に見逃してはいけない」(山本氏)とし、自動運転の実現には何重もの壁をブレークスルーする必要性があることを訴えた。
三菱自動車の布野氏は、フェルディナント・ヤマグチ氏いわく「電制の鬼」であるランサーエボリューションX(エボX)にまつわる逸話を紹介した。四輪駆動制御機能の「S-AWC」、さらにはステアリング舵角と車両挙動からそれらの制御を高度に行うヨーレートフィードバックなどの電子制御をもつ。
同氏によれば、特別なトレーニングをしたことのない一般ドライバーがエボXで「ものの見事に、きれいにドリフトしていった」のを見たという。電子制御をオフにすれば、恐らくは不可能だったその走りを見て「どんどんクルマの機能が向上していけば、ドライビングが楽しくなるし、安全に安定して速く走れる。そういうことを目指していくべきなんだろう」(布野氏)とあらためて考えるに至ったと述べた。
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