さらに本田技術研究所の椋本氏によれば、同氏が開発したS660においても、主に初心者のドライビングスキルをアシストする目的で電子制御を採用しているという。アジャイルハンドリングアシストシステムと呼ばれるもので「ブレーキをつまんで(軽くかけて)曲がりやすくするシステムで、社内では“よいしょマシン”と呼んでいる」という。
同氏は「運転スキルが少なくても気持ちよく曲がることができ、『うまいですね!』と“よいしょ”してくれる(イメージ)」と言い、「より気持ちよく走って、運転の楽しさを味わってもらうために電子制御を使っている」と明かす。
その電子制御を担うデバイスがスポーツ走行において必要かどうかについて、トヨタ自動車の矢口氏とマツダの山本氏が論戦を繰り広げた。「(電子制御デバイスで)クルマに助けられながらでもいいから、サーキットを走るという楽しさを味わってもらい、その後にだんだん制御をなくして走れるようになっていくのでもいい」と話す矢口氏。
これに対し、山本氏は「どちらかというと(電子制御デバイスのない)ピュアから入ってもらって、車両の挙動変化をデバイスがない状態で知ってもらい、デバイスのありがたさ、デバイスがどうサポートしてくれているのかを理解してもらえた方がいいのではないないか」と反論した。
しかしトヨタ自動車の矢口氏は「当然、クルマの動きを勉強するのに素から入るのはいい」としながらも、「全ての人が安全な状況でクルマの素の状態を体験できるわけではない。(ロードスターのような)使い切るエンジンではなくて、(レクサスのような)400〜500馬力のエンジンの車両で遊んでいただくとすると、電子制御デバイスできちんとサポートしないと、楽しむどころか危険になってしまう」と述べ、車両や環境によっては電子制御デバイスが欠かせないとの認識は崩さない。
最後はマツダの山本氏が「クルマにはいろんな楽しみ方がある。ジムカーナをやる人もいれば、峠に行く人、ハイパワーなクルマでサーキットを走る人もいる。ビギナーがいきなりそこには入っていけない世界だろうと思う。“誰に”(電子制御デバイスを使ってもらうのか)というのがもしかしたら抜けていたのかも」と一定の理解を示した。
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