米Amazonが発表したIoTサービス「AWS IoT」は業界に大きなインパクトを与えた。一企業の発表した取り組みがなぜ、IoTを取り巻く各社に大きな影響を及ぼすのかを考察する。
米Amazon Web Servicesはラスベガスで「AWS re:Invent 2015」という開発者向けの年次カンファレンスを開催したが(現地 2015年10月8日)、ここで明らかにされた「AWS IoT」は業界にちょっとしたインパクトを与える事になった(関連記事)。
言うまでもなくIoTをクラウドサービスと分けて考えるのは非現実的である。以前からIoTを利用する事で数十億〜数百億のデバイスがつながる(Be Connected)などといわれてきたが、その数十億のデバイスが一斉に通信を行ったらどうなるか?というと単なるデータの爆発である。
もちろんエンドノードあるいは中間デバイスやゲートウェイなどで適切なフィルタリングをかける事でデータ量が減る可能性はあるが、普通のサーバではどうにかなる量ではない。というのは、データ量は単に台数だけでなく経過時間にも比例して増えるからで、収集されるデータの総量はいわゆるビッグデータの領域に入る。これを普通のサーバでどうにかするのは困難であり、蓄積とその分析にはクラウドサービスが欠かせない。
別の観点からもクラウドサービスは有用である。ほとんどのクラウドサービスはきちんとスケーラビリティを確保して提供してくれるから、接続されるデバイス数、あるいはデータ量に急激な変動があってもこれを吸収しやすい(サービス側がそれに対応した設計をしていれば、という前提ではあるが)。
例えばある種のセンサーネットワークを考えてみる。特に変動がないときはデータを蓄積してせいぜい1日に1回程度の頻度でデータを送信するが、何かイベントがあったら送信頻度を数分〜数秒単位まで高めて、準リアルタイムで状況を把握できるようにしたいという要望があったとする。これは普段の運用コストを抑えつつ、何かあった場合はコストよりもデータの正確さやリアルタイム性を重視する、というケースではそう珍しく無い。この結果として、何かあったときには上流の処理負荷が急激に増える事になる。こうした用途にクラウドサービスは最適である。
こうした事があるからこそ、主要なIoT規格はいずれもクラウドサービスとの連携を重視している。例えばGoogleの「Project Brillo」(関連記事)はクラウドサービスとのコミュニケーション手段として「Weave」を提供するし、Appleの「HomeKit」ではHAPを使う事で自動的にクラウドサービスの連携が取れる形となる。この連載の前回に紹介したARMの「mbed OS」においても、もともとクラウドサービスとの連携はアピールされていたが、2015年9月3日にIBMのBluemixとの連携を発表しており(関連記事)、これでコンポーネントがそろった事になる。
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