IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第49回は、ついにEOL(End of Life)がアナウンスされたArmの「Mbed OS」について、なぜ淘汰の波に飲まれたのかを考察する。
ArmのリアルタイムOS(RTOS)である「Mbed OS」は本連載第5回で紹介させてもらったのだが、大きな変化があったので今回あらためて取り上げたい。
その変化とはEOL(End of Life)のアナウンスである。2024年7月11日、Arm Mbed OS support forumに“Important update on Mbed - End of Life”というお知らせが掲載された(図1)。
その内容は以下の通りである。
その上で、以下のような対応を強く推奨している。
ちなみにこの発表の時点で、Armは既にMbed OSのメンテナンスを終了していることも明らかにしており、2026年7月までこの状態が続く。そして2026年7月に、コードはGitHubに移行されるとしている。要するにもうセキュリティを含む一切のメンテナンスが期待できないことになるわけだ。
連載第5回の時点では、Version 5.15.5とVersion 6.2.1がリリースされていたMbed OSだが、Version 5の方は2022年5月の5.15.9が、Version 6の方は2023年5月の6.17.0がそれぞれ最新版となっており、これが最終リリースということになる。どちらも、取りあえずKnown Issuesには何も上がっておらず、ある意味安定したバージョンではあるのだが……。
Version 5の最終バージョンである5.15.9のサマリーには“We anticipate this release to be our final Mbed OS 5.15.x release as we have fulfilled our commitment of a two year support period for Mbed OS 5.15. We continue to focus our support efforts on Mbed 6 and encourage anyone who hasn't yet migrated from Mbed 5.x.x to Mbed 6 to do so.(Mbed OS 5.15の2年間のサポート期間という約束を果たしたので、この5.15.9がMbed OS 5.15の最終リリースになることを予定している。われわれは引き続きMbed 6のサポートに注力し、まだMbed 5からMbed 6に移行していないユーザーには移行をお勧めする)”とあって、少なくともこの時点ではまだMbed 6が引き続きサポートされることを想定していたようだ。
しかし、Version 5の最終バージョンである6.2.1のサマリーには“This release mainly integrates fixes to issues identified over the previous months.(このリリースは、主に過去数カ月間に確認された問題の修正をまとめたものである)”とだけあって、何となくそろそろ幕引きに向けたニュアンスが感じられなくもない。
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