くいんととロボット受託開発のイクシスリサーチによるインフラ点検ロボットの研究事例も紹介されていた。
くいんとの位相・形状最適化設計ツールを使い、一体化したロッカーボギーリンク(左右で異なる高さの段差を昇降しやすくする構造)部品を設計、生産した。橋の裏側などのインフラ点検を効率良く行うという。重量は10kg以下と軽量化されており、人が持ち運ぶこともできる。Fortusシリーズの中で最大の造形サイズを誇る「Fortus 900mc」を用い、機械的特性の高い材料「ULTEM9085」により造形している。
ブース正面では、MSYSがテクノロジーパートナー契約を結んでいる民間宇宙開発チーム「HAKUTO(ハクト)」の展示も行っていた。ハクトは個人や東北大学などで構成される混成チームで、民間組織による月面ロボット探査の国際レース「Google Lunar XPRIZE」で優勝することと、月周回衛星「かぐや」が発見した縦孔内の探査をミッションとしている。ハクトは、月面ローバー「Moonraker」と小型の「Tetris」の2台でミッションの実現を目指す。
Google Lunar XPRIZEは、月面に純民間開発の無人機を着陸させ、500m移動して動画や静止画データを地球に送信するもの。ハクトは2015年2月には、16チーム中トップ5となるモビリティサブシステム中間賞を受賞している。縦孔探査では、小型のTetrisを縦穴に降ろして探査を行う。重量は2台合計で10kgほどだ。Tetrisは2輪でスタビライザー(しっぽ部分)が付いており、小さな障害物なら乗り越えられるようになっている。
2台それぞれのホイール部分はFortusシリーズを用い、ULTEM9085で造形されている。熱や振動試験については問題がなく、ほぼ現在のデザインをベースに軽量化して最終製品を製作するとしている。
3Dプリンタ製ホイールを採用したのは、「開発サイクルが短くなるのに加えて、機械特性も優れている」(説明員)と判断したからだという。金属加工の場合、削り出しに時間もコストもかかるため、気軽に試作ができず、何度も検討することが難しい。また、金属製だと重量増につながり、打ち上げコストと月面での活動エネルギーの増加につながってしまう。さらに、金属では温度変化の激しい月面の熱を本体にダイレクトに伝えてしまうため、樹脂製が適切だったという。
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