名古屋大学は、分子触媒を用いた最先端合成化学の手法により、哺乳類の体内時計(概日時計)のリズムを変える新しい分子の発見に成功したと発表した。
名古屋大学は2015年5月11日、分子触媒を用いた最先端合成化学の手法により、哺乳類の体内時計(概日時計)のリズムを変える新しい分子の発見に成功したと発表した。同大トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)の伊丹健一郎教授、吉村崇教授、スティーブ・ケイ教授、ステファン・イレ教授らの研究チームによるもので、同月8日に独化学誌「アンゲバンテ・ヘミー」オンライン版に掲載された。
人間の体内には、1日のリズム(概日リズム)を刻む体内時計(概日時計)が備わっている。概日時計は、睡眠・覚醒リズムの他、ホルモンの分泌や代謝活動の制御にも重要な役割を果たしており、さまざまな疾患克服のため、概日リズムを自在に制御する分子の開発が求められてきた。
ITbMでは今回、合成化学・触媒化学・時間生物学・動物生理学・計算化学を融合させた研究チームを結成。時計タンパク質CRYに直接作用し、概日リズムの周期を長くする分子「KL001」の構造活性相関を明らかにした。また同時に、概日リズムの周期をより長くしたり、短くしたりする分子を発見することに成功した。
研究ではまず、わずか3段階でKL001の分子構造を多様に変化させられる合成方法を確立。これに従って50種類以上の誘導体を合成し、これらの分子が概日リズムに及ぼす影響(活性)をヒト培養細胞を用いた生物活性試験により調査した。
試験では、カルバゾール部位はリズム変調活性に必須の部位であること、また、アミノアルコール部位やフラン環・チオフェン環部位は他のものに置き換えが可能であることが判明。さらに、C-Hカップリングにより、フラン環・チオフェン環に導入した置換基はリズム変調の長短を調整する部位であることが分かった。
同研究成果により、今後、体内時計によって支配されているさまざまな疾患の克服や、食料増産などに貢献することが期待されるとしている。
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