マツダの小型SUV「CX-3」の外観デザインは、同社の新世代商品の中でも「シャープでモダン」とされている。このシャープでモダンなデザインは、従来の車両デザインとは異なる“3Dスケッチ”によって生み出された。
マツダが2015年2月末から販売を開始した小型SUV「CX-3」。同社の新世代技術「SKYACTIV」と新デザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」を全面採用した“新世代商品”の第5弾であり、発売から約1カ月の累計受注台数が1万台を越えるなど、販売も好調だ。
CX-3の外観デザインは、マツダの新世代商品の中でも「シャープでモダン」とされている。このシャープでモダンなデザインは、従来の車両デザインとは異なる“3Dスケッチ”によって生み出された。
CX-3のような完全に新規の車両の外観デザインを設計する場合、デザイナーはその車両のモチーフ(CX-3の場合は魂動デザイン)などから得た発想を、紙の上に描いたり、CGツールを使ったりして、2Dのスケッチとして表現する。この2Dスケッチを基に、クレイモデラーが車両のクレイモデルを製作。そして、クレイモデルを3Dスキャナなどで計測したデータから、車両の3Dデータが初めて得られるのだ。
デザイナーは、この3Dデータを使って、より精度の高い外観デザインを作り出し、クレイモデラーはより精度の高まった3Dデータからさらに車両のクレイモデルの精度を高める。この後は、デザイナー→クレイモデラー→デザイナー→クレイモデラー……というやり取りを繰り返しながら、最終的な外観デザインが決定されていく。また、外観デザインを決定するまでの間に、その存在感を確認するために「プレゼンスモデル」を作ることがある。
しかしCX-3の外観デザインは、こういった従来のプロセスとは、スタートラインが異なっているという。マツダのデザイン本部 アドバンスドデザインスタジオ アドバンスデザイングループでシニアデザイナーを務める松井貴宏氏は、「『こういったデザインの車両を作りたい』という考えを3Dデータにまとめた3Dスケッチとして提案したところ、それを採用してもらえた。この3Dスケッチと、3Dスケッチから作成したプレゼンスモデルによって、クレイモデラーとの意識共有もスムーズに進んだ」と語る。
カーデザイナーの車両デザイン業務では、現在も2Dスケッチが主流だ。松井氏が「当社でも従来にない挑戦的アプローチだった」と話す通り、3Dスケッチはまだ広く利用されてはいない。しかし大手CADベンダーが3Dスケッチ用の開発ツールを投入するなど、環境は整いつつある。CX-3のように、3Dスケッチでデザインした車両が当たり前になる時代は意外と早くやってくるのかもしれない。
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