車両デザインを通して、「デザイン」の意味や価値を考えていく本連載。第2回は、第1回に引き続きマツダの「魂動(こどう)デザイン」を取り上げる。高い評価を得ている魂動デザインだが、販売店にとってどのような価値があるのだろうか。小型SUV「CX-3」のインプレッションと併せて紹介する。
前回は、大幅改良された「アテンザ」と「CX-5」とチーフデザイナーであるマツダ デザイン本部の玉谷聡氏へのインタビューを題材に、主にクルマの作り手側からマツダの「魂動デザイン」を見てみた。
この連載には「コミュニケーションツールとして、デザインをビジネスで使う」こともテーマの1つとして挙げている。前回も書いたが、生活者の周りに流れる情報量が増え、流れ去るスピードも速くなっている中で、商品を選んでもらうには、人々の意識の中でのシェア、“マインドシェア”の獲得が重要になってくる。そう、意識になければ選択肢にも入ってこないのだ。そのマインドシェアを得るために、デザインを意図を持って使うことで、一貫性のあるイメージを作るという戦略の重要度は増している。
これは、商品の作り手側からのデザインだけにとどまらない。その商品をエンドユーザーに届ける最前線の販売やサービスの現場にとっても重要な要素になり得る。マツダのクルマが、魂動デザインで話題になって、それによって興味を持った将来的にユーザーとなるかもしれない人が販売店に訪れても、その段階で得られる経験が芳しくなければ購入には至らない。
顧客経験や顧客体験などといわれるものが重要という話を最近よく聞くという方も多いかと思う。人の経験や体験は個人的な感情とつながっているので、それそのものを「デザイン」することはできない。モノやサービスの送り手である企業にできるのは、顧客とのあらゆる接点において一貫性ある態度をとることによって、顧客が受け取るであろうイメージにも一貫性を持たせて、良い期待感をブランドイメージとして持ってもらえるような活動を続けることだけだ。
最近のマツダでは新世代技術「SKYACTIV」と「魂動デザイン」を主軸としているわけだが、クルマだけでなく、マツダのデザイン本部が監修した新世代店舗を2014年7月から全国で順次展開している(関連記事:マツダが「新世代店舗」を発表、デザイン本部が監修)。
そこで今回は、販売の現場にいる方へのインタビューと、販売店でのインタビュー後にタイミング良く発表されたクロスオーバーSUV「CX-3」という2つの切り口から魂動デザインを見ていきたい。
先述した通り、マツダでは同社のデザイン本部が監修した新世代店舗の展開を進めている。2014年12月には、関東マツダの目黒碑文谷店が新世代店舗としてリニューアルされた。そこで、同店の店長を務める片桐洋志氏に、魂動デザインや、新世代販売店としてショールーム運営を始めてからの変化などについて伺った。
最初に魂動デザインのクルマとして発売されたCX-5から3年ほど経過したが、その間に「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」が順に投入されてきた。片桐氏は、「特にアテンザが発売されたときの顧客からの反響が大きく、それ以降販売の現場で変化が起きた」と語る。
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