みらいは宮城県に「世界最大規模」(同社)という植物工場を完成させた。生産能力はレタスで1日1万株だという。
植物工場装置や野菜販売を手掛けるみらいは、みやぎ復興パーク(宮城県多賀城市)内に人工光型植物工場を完成させた。全面的にLED照明を採用した植物工場としては「世界最大規模」(同社)で、1日約1万株のレタスが収穫可能だという。
新たな植物工場は、みやぎ復興パークが入居するソニー仙台テクノロジーセンター内の既存建屋(電子デバイス工場)を利用。電子デバイス生産で活用していたクリーンルームや高い階高、断熱性能など、建物が既に持つ特性を有効活用しつつ植物工場にリノベーションした。施設の設計・施工、栽培ラックシステムのエンジニアリングを鹿島建設が行い、高効率な植物育成用LED照明の開発・製造を日本GEが担当した。
植物工場の延床面積は約2300m2で、栽培ラックは6〜15段のものを18台用意する。また利用されているLED照明は約1万7500本だという。
みやぎ復興パークは、東日本大震災により被害を受けた東北地域のモノづくり産業の復興や新たな産業の創出・発展を図る拠点として、みやぎ産業振興機構がソニー仙台テクノロジーセンターの施設を借り受け、整備しているものだ。
みらいと日本GEは、経済産業省東北経済産業局による「IT融合による新産業創出のための研究開発事業」に採択され、2012年4月から研究開発事業を実施してきた。これまで人工光を使った植物工場の照明には初期コストの安い蛍光灯が主流となっていたが、みらいはGEの照明部門および宮城県とのパートナーシップを通じ、植物の成長に適した波長を持つLED照明を共同開発。植物育成用LED照明を用いることで、蛍光灯を使った場合に比べ消費電力を40%削減しつつ、収穫量を50%増加させることに成功したという。
一方建設に携わった鹿島建設では、医薬品工場などを手掛けた経験から、衛生的で運用効率の高い施設の建設を推進。また、植物の蒸散などを考慮した高度な栽培環境シミュレーションにより、栽培ラックを取り巻く風速の分布や空気温度の分布を検証した空調システムを設計、導入し、植物の生育に最適な環境を構築した。
植物工場そのものの運営はみらいが行い、生産した野菜は地元のスーパーやレストランなどに販売する。売上高は年間数億円程度を見込むという。さらに今後は、日本の植物工場で作られた野菜を輸出するだけでなく、この実証事業で培われた先端農業を工場ごと輸出することを狙う。既に国内・海外ともに複数の案件が進行中で、海外では香港、ロシア極東地区への植物工場の導入を進めていくという。
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