行間を読む文化(日本語) vs. 読まない文化(英語) 〜オフショア開発とご近所付き合い〜山浦恒央の“くみこみ”な話(55)(2/2 ページ)

» 2013年06月11日 15時00分 公開
[山浦恒央 東海大学 大学院 組込み技術研究科 准教授(工学博士),MONOist]
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4.海外発注用に仕様書を書く場合の注意点

 『標準テキスト オフショアプロジェクトマネジメント 【SE編】([著]幸地司、霜田寛之 [監修]北島義弘、倉田克徳:2009年 技術評論社)』によると、海外にソフトウェア開発を発注する際、仕様書を書く上で、以下が代表的な障害となるそうです。

  1. 主語がない文章
  2. 一文一意ではない文章
  3. 略語の多用
  4. 業界用語の多用
  5. 和製英語の使用
  6. 二重否定の使用
  7. 接続詞が少ない文章
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 日本語の文章では、主語がない文章が当り前です。略語や和製英語は日本の文化内でしか使いませんので、日本では何の支障もありませんが、外国人エンジニアは大混乱するでしょう。二重否定の文章は、日本人であっても解釈するのは簡単ではありません。つまり、「外国人エンジニアは仕様書の行間を読んでくれない」の正体は、この1〜7を理解してくれないということなのです。

 日本人とのやりとりでは、1〜7を含む文章でも、行間を阿吽の呼吸で補ってくれるでしょうが、異なる文化背景を持つ外国人エンジニアには、全く理解できません。その点を特に注意する必要があります。仕様書に関係する最大の問題点は、日本人の文章力、というより、日本文化に根差した文章に問題があるといえます。


5.おわりに

 自然言語を使用して、海外発注用の仕様書を書く限り、曖昧さは避けられません。しかし、本稿で紹介した注意点を踏まえ、仕様書を丁寧に書くように心掛けると、相手が理解しやすい文章が書けるはずです。もしも、要求仕様書だけで全てを伝えることが無理だと感じた場合は、例えば、プロトタイピングなど、「実際に動作する仕様書」の作成が有効でしょう。(次回に続く)

【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)
東海大学 大学院 組込み技術研究科 准教授(工学博士)

1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科助教授、現在に至る。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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