業務効率化の道具箱(3)続・ショートカットキー活用、「技術の複利効果」で作業効率が上がりミスも減る山浦恒央の“くみこみ”な話(156)(1/3 ページ)

ソフトウェア開発にとどまらない、PCを使う全ての人が対象となるシリーズ「業務効率化の道具箱」。第3回は、第2回に続きショートカットキーを紹介する。塵も積もれば山となる方式で得られる「技術の複利効果」により、急激に作業効率が上がり、同時にミスも減らせるはずだ。

» 2022年08月25日 08時00分 公開
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1.はじめに

狼男 ※写真はイメージです

 ソフトウェア工学の世界に「銀の弾丸(Silver Bullet)」という言葉があります。心臓に撃ちこめば狼男を一発で倒せる「銀の弾丸の神話」が由来で、ソフトウェアの品質や生産性の課題や問題点を「狼男」に見立て、たった一つの方策で「狼男」を倒せる夢のツールや方法論を「銀の弾丸」と呼びます。

 50年前は、PascalやPL/Iのような高級言語が、30年前はAI(人工知能)が、最近ではオブジェクト指向が「銀の弾丸の候補」でした。現在では、「ソフトウェア開発で『銀の弾丸』は存在しない。開発フェーズのいろいろな箇所で、少しずつ、いろいろなツールや開発方法論を駆使して、『塵も積もれば山となる』方式で、品質制御や生産性の向上を目指すべきである」が定説になりました。

 今、「銀の弾丸」という言葉は、「このツール一つだけで品質や生産性を改善できると勘違いしている」という皮肉をたっぷり込めて使います。

 本シリーズでは、「塵を集めて」日々の作業を効率化し、定時できっちりと帰宅する方法を紹介しています。「塵を集める」ことは、「エンジニアの知恵を集める」ことでもあります。投資における複利効果のように、「技術的な塵が集まると、『技術の複利効果』により急激に作業効率が上がり、同時にミスも減らす」ことが可能になります。

 主な業務効率化の例を下記に示します(詳細は連載第154回参照)。

  • スペックの高いハードウェアを導入する
  • 使用機器を使いこなす
  • ツールを導入する
  • 自分でツールを作る
  • 働き方を工夫する

 前回は、これらの中から「使用機器を使いこなす」に着目し、エンジニアが知るべきショートカットキーを紹介しました。今回は、その続編です。

⇒連載「山浦恒央の“くみこみ”な話」バックナンバー

2.PC操作とショートカットキー

 ソフト開発、事務作業などにPC操作は必須です。その際、効率良く作業する方法が、「ショートカットキー」の活用です。例えば、文字列をコピーする場合、文字列を選択して右クリックメニューからコピーするより、「Ctrl+C」でコピーした方が圧倒的に早く、ミスなく処理できます。「早い」だけでなく、「ミスが少ない」ことも、ショートカットキーの大きな効果です。

 プログラマーなら、「ショートカットキーなんて知っていて当たり前だよ!」と思うでしょうが、対象者の範囲を広げると、使いこなしている人は決して多くありません。例えば、筆者の肌感覚では「PCを学びたての若年層」「パート従業員」「シニア層のマネジャー」などです※1)。これらの人たちの処理効率が上がると、グループ全体の効率が大きく上がり、ミスも減ります。

※1)もちろん、全ての人がショートカットキーを使えないというわけではありません。一つの意見としてご理解頂ければと思います。

2.1 PCを学びたての若者

 PCを学びたての若年層は、操作に慣れておらず、ショートカットキーをあまり知りません。例えば、情報系学部1年生の授業をのぞくと、ショートカットキーを駆使してプログラミングをしている学生はあまり見かけません。

 一方、上級学年は、コンソールとエディターをAlt+Tabで自由に行き来し、コピペも「Ctrl+C」「Ctrl+V」で実行するようになります。

2.2 パート従業員

 小売店で働くようなパート従業員さんの中には、PCが得意でない方も少なくありません。事務作業を見ていると、マウス中心で操作しているようです。

 少し前の話ですが、筆者は、小規模小売店からの依頼を受け、同店のアプリケーションプログラムを開発したことがありました。そのとき、同店のパートの主婦の方にPCの使用頻度を聞いたところ、「パソコンはホームページを見るぐらいなんです」という方もいました。

2.3 シニア層のマネジャー

 肌感覚ですが、業務を管理するマネジャー層が意外にもショートカットキーを使いこなせていません。日々、業務の効率改善を部下に指示しているのですが、まず、自分の業務効率青向上させることが必須です。

 実は、筆者も人のことはいえません。ショートカットキーを駆使するエンジニアの「議事録作成」「プログラミング」「Excel操作」を見ていて、魔法のように早くてビックリしたことがあります。「徒歩」と「自動車」の速度の違いを見た気分です。

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