イチから全部作ってみよう(18)生成AIと協力してプログラミングする時代がきた山浦恒央の“くみこみ”な話(187)(1/3 ページ)

ソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」。第18回は、ちょっとした寄り道として、うるう年判定プログラムをテーマに、生成AIを活用したプログラミングのやり方を紹介する。

» 2025年03月18日 08時00分 公開

1.はじめに

 山浦恒央の“くみこみ”な話の連載第170回から、入門者をターゲットとして、「イチから全部作ってみよう」というシリーズを始めています。第186回までの17回で、要求仕様書の作成/レビューまでの一連の流れを解説しました。なんとなくでも、ソフトウェアの開発工程のイメージを掴んでいただければ幸いです。

⇒連載「山浦恒央の“くみこみ”な話」バックナンバー

 今回は、少し「寄り道」をし、学生の皆さんをターゲットとして、今話題の生成AI(人工知能)を取り上げます。「寄り道」とはいいながら、今後のシリーズでは、仕様書の定義、設計書の作成、コーディング、テスト項目の設計、バグの検出に至るまで、生成AIを積極的に活用することを考えています。今回のテーマは「寄り道」に見えますが、実は、メインストリートにつながるのです。

2.定年までの40年で技術は急激に進歩する

 現在は西暦2025年ですが、ここに至る長い歴史の中で、さまざまな新製品が登場し、人々の暮らしを便利にしてきました。新製品が便利だと分かると、それ以前の世界に戻ることはありません。例えば、「移動手段が馬から自動車に変化した」「計算機の普及により暗算をする機会が減った」「囲碁AIが人間より強くなり、AI棋譜を参考にするようになった」というように、以前の世界に戻りません。

 皆さんが20歳前後で学校を卒業し、定年まで働くとすると、それまでに40~50年の期間があります。その間、技術は急激に進歩し、想像できない新製品が次々現れるでしょう。例えば、筆者が新卒で就職した40年前には、コンピュータはメインフレームが中心でPCはなく、音声通話、電子メール、Webブラウジング、カメラの機能が手のひらサイズに収まる「スマートフォン」で可能になるとは思いませんでした。

蒸気機関車 ※写真はイメージです

 蘭学者の緒方洪庵先生は、江戸時代後期、日本を代表する最先端の知識人でした。緒方洪庵先生の時代から、たった100年で新幹線が走り、150年でスマートフォンにより世界が手の平の上でつながったのです。緒方先生は、そんな技術の長足の進歩を1ミリも想像できなかったに違いありません。皆さんも、40年後にどれほど技術が進歩しているか、現時点では全く想像できないのです。半世紀先の「まだ見ぬ最先端技術」を想像すると、ワクワクしませんか。

 モノづくりにおける「人類の大事件」が、蒸気機関の発明による産業革命です。それまでの物流は、陸上なら馬や牛や人力、海上なら風力が中心でしたが、蒸気機関によって、蒸気機関車、蒸気機関を積んだ外輪船ができ、世の中が革命的に進歩しました。この蒸気機関と同様に、大きな変化をもたらすのがChatGPTをはじめとする生成AIだと思います。

3.新技術を試すか、試さないか

 次々と現れる新製品を好んで試す人と、そうでない人がいます。おそらく、蒸気機関が発明された頃も、機関車に乗らなかった人はたくさんいたと思います。

 翻訳学校の講師をしている友人から、こんな話を聞いたことがあります。

「今は、ChatGPTで翻訳する方が訳文の品質が高いし、誤訳もない。しかも、翻訳に要する時間も圧倒的に短いし、ChatGPTを無料で使えてコスト的にも優れている。ChatGPTで出力した訳文をドラフト訳として使い、それを日本語らしい文章に磨き上げると、時間、コスト、品質的に優れた翻訳が可能になる。なのに、かたくなに紙の辞書を使い、時間をかけ、日本語としてあり得ない『受験の英文解釈』のような言葉を使った訳文を書いてくる受講生がいる。もちろん、そんな人はプロで食っていけないけれど、本人に何度言っても気が付かない」

 このようにかたくなに翻訳ソフトや生成AIを使わない人がいます。夏目漱石や森鴎外レベルの素晴らしい文章が書けるなら何の問題もありませんが、もちろん、そんなことはありえません。

 数々のハイテク系の新製品の中で、昨今、話題で持ちきりなのが生成AIです。生成AIとは、文章作成、プログラミング、画像生成などを自動で生成するAIのことです。例えば、「プログラムを作って」と依頼をすると、プログラムを生成します。

 筆者も、1年程活用してみて、生成AIと協力して成果物を作る時代がもう目の前に来ていると感じています。ぜひ、本記事で、簡単な使い方と注意点を知り、ソフトウェア開発で利用して、次回以降のテーマに備えていただければと思います。

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