部品内蔵基板の最大の問題は価格と厚さです。基板を使う側としては、部品内蔵基板を導入するかしないかの判断は価格です。この価格は、単純に基板単価だけではなく、実装、歩留まり、製品の価値を含めた総合的な損益判断となります。例えば部品内蔵基板の価格が高くても、基板の小型化によって、装置が小型化でき、製品価格が高くなっても市場価値が上がるならば導入の効果があります。
部品内蔵基板の価格はどうしても普通の基板よりも高価なものとなります。これはビルドアップの合間に部品実装の工程が入るし、検査工程も単純な基板のオープン、ショート検査から、部品を含んだ検査になるからです。基板の不良が出た場合にも普通の基板であれば、軽微な不良であれば、回収して歩留まりを上げることも可能ですが、部品内蔵ではこのような回収が困難となります。また、場合によっては、基板内層部品は一般のチップ部品と異なるチップ部品を使う場合もあります。これは、部品内装用に高さの低いチップ部品やはんだ付けではなく銅めっき接合で部品実装するテクノロジ用の部品などもあります。このような特殊な部品は生産個数も少なく汎用品よりも多少なりとも高価となります。
次に基板の厚さが問題となります。例えば標準的な1005チップ部品では部品高さが0.35mm程度、0603部品では程度の0.25mm程度の厚さがあります。これらの部品をはんだ付けして基板の内層に実装するには3〜4層分の厚さが必要となってしまいます。これに部品の上下に必要な配線やプレーン層を付加すると最低でも8層程度、基板厚が1mm程度になってしまいます。
スマートフォンをはじめとする携帯電子機器は面積としては液晶画面の大型化が進み、小型化の動きは止まっています。むしろ少しずつ大型化しているものもあります。その代わり、薄型化、軽量化が小型化の流れとなっています。
例えばiPhone5ではiPhone4に比べ、画面サイズが大きくなり面積の変化はなかったものの、厚さと重さの面で、小型化がなされています。機器の軽量化薄型化のためには基板を薄く、軽くすることが望まれています。部品内蔵基板では基板の表面積を小さくすることに効果がありますが、基板の薄型化、軽量化では不利になります。この基板厚を抑えるために内層実装用のコンデンサなども製品化されています。例えば、1005部品で、厚さ01.5mmとか、はんだ付けでなく銅めっきで、接続部の高さを低くする工夫などがあります。しかし、このような特殊な部品は生産数が少なく、割高なものとなります。
今後、TSV(Through Silicon Via)によるシリコン・インタポーザが普及してくると高機能インタポーザは部品内蔵ビルドアップ・インタポーザとの競合になると思われます。
部品内蔵基板が離陸できるかどうかは、価格はもちろんのこと、基板のさらなる薄型化や生産性などといった面の向上が必要となり、まだまだコモデティ技術とはなっていません。逆に、それだからこそ、日本の優位性が示せる技術である、ともいえるでしょう。
前田 真一(マエダ シンイチ)
KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。
近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.