実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第17回は、ガーバデータをはじめ、プリント基板設計技術者にとってデファクト・スタンダード(業界標準)となっているCAD/CAMツールのデータ形式について解説する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2012年8月号の記事を転載しています。
第16回で紹介したEDIF(Electronic Design Interchange Format)は業界の人間が集まって委員会を作り、策定した標準フォーマットです。このような場合、規格は業界標準団体や役所が主導して、標準規格として、登録されます。しかし、それ以外に別に標準化規格として策定されたのでもなく、標準規格として登録されているものでもない標準規格もあります。
これは、デファクト・スタンダード(de facto standard)と呼ばれる標準規格で業界標準などとも呼ばれます。
例えばガーバ(Gerber)フォーマットと呼ばれる作画データフォーマットがデファクト・スタンダードです(図1)。
デファクト・スタンダードとは、特定の企業が開発したシステムのフォーマットが多くの会社で標準フォーマットとして使われることです。例えば、先のガーバ(Gerber)フォーマットは、ガーバー社が自社製のフォト作画装置の入力フォーマットとして開発したものです。
ガーバー社のフォト作画装置は市場占有率が高く、多くのプリント配線版製造業者が使用していました。このため、基板製造業者は基板設計CADから直接、このガーバ・フォーマットファイルの出力を希望しました。
ガーバー社はこのフォーマットを公開し、またフォーマットがファイン化にも対応できるなど、扱いやすかったため、多くのCADがガーバ・フォーマットファイルの出力機能を装備するようになりました(図2)。
他の作画機メーカーも、自社独自のファイルフォーマットではなかなか設計CADが個別対応してデータを出力してくれないので、自社の独自フォーマット以外にもガーバ・フォーマットファイルを入力して作画する機能を開発しました(図3)。
このようにして、多くの基板設計CADと作画機がガーバ・フォーマットのファイルをサポートするようになりました。また、ガーバ・フォーマットのファイルが普及してくると、作画機がなくても、作画内容が確認できるようなビューアや、フォーマット・チェッカ、ガーバファイル編集機などのユーティリティーソフトウェアも多くなります。このようにして、特定の会社の装置が使用していたデータフォーマットや、用語、設計基準、設計や測定の手法などが多くの他の会社でも使われるようになり、事実上の業界標準となったものをデファクト・スタンダードと呼びます。
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