ルネサスは、マイコンやアナログICなどの個別製品を提案してきた「プロダクトサプライヤ」から、現在移行を進めているマイコンを軸にアナログICを一緒に提案する「キットソリューションサプライヤ」を経て、ソフトウェアまで含めた提案を行う「プラットフォームサプライヤ」になる必要があると考えている。
今回の出資で得られる1500億円は、プラットフォームサプライヤに進化する上で必要になる、「コアコンピタンスの強化」、「ソリューション提案力の強化」、「急激な市場変化に対する耐性強化」という3つの領域に分けて用いる。
まず、コアコンピタンスの強化では、研究開発投資に400億円、設備投資に200億円を費やす。マイコンの製造に適用する40/28nmプロセスの開発と設備投資を進めながら、自社の制御系IP(Intellectual Property)と、先進プロセス製品の量産パートナーであるTSMCが持つ情報通信系IPを融合させて周辺機能を充実させ、「マイコンで圧倒的トップを目指す」(赤尾氏)方針である。
信号処理などに用いる車載アナログICでは、デジタル回路部への90nmプロセスの採用により高集積化を進めるとともに、ウェハーの300mm化でコスト競争力を強化する。パワー半導体は、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)を用いた次世代製品の開発や、個別部品を組み合わせて多機能を1パッケージで提供するモジュール化を進める。
次に、ソリューション提案力の強化では、自動車向けで400億円、産業機器向けで400億円を投資する。それぞれの分野で、IPやソフトウェアの開発に注力し、プラットフォームサプライヤとしての事業展開を早期に行えるようにする。
最後に急激な市場変化に対する耐性強化では、経営基盤の再構築に100億円を用いる。特に、東日本大震災で那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災した際の教訓を生かして、今後の生産の主力となる90/40nmプロセスについて大手ファウンドリを含むマルチファブ化(多拠点生産)を実現し、顧客への安定供給体制を強化する。
今回の会見では、マイコンを軸にアナログ&パワー半導体を組み合わせて高付加価値の提案を行う体制について言及があったものの、もう1つの主力事業であるSoCのことはほとんど触れられなかった。
ルネサスのSoC事業については、パナソニックや富士通セミコンダクターのSoC事業と統合して分離独立させる計画が報道されている(関連記事2)。
赤尾氏は、報道陣との質疑応答の中で、「ソリューション提案力を強化する上で必要になるSoCは強化していく。具体的には、世界トップシェアの車載情報機器向けのSoCや、産業機器向けのSoCやASICが強化対象になるだろう」と述べ、SoC事業の分離独立についてはコメントしなかった。
また、Nokiaから買収した携帯電話機向けモデムIC事業についても、ソリューション提案力の強化に必要な製品の1つとして挙げていた(関連記事3)。
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