2012年度の中間決算で、1151億円もの純損失を計上したルネサス エレクトロニクス。同社は通期で営業黒字を達成すると予想しているが、主力顧客である自動車メーカーや電装部品メーカーの業績予想の下方修正が続くなど事業環境は厳しい。果たして、待望の通期営業黒字は達成できるのだろうか。
2012年度(2013年3月期)の中間決算で、約7460人という大規模な早期退職制度の実施に伴う特別損失約840億円などを含めて1151億円もの純損失を計上したルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)。厳しい経営環境にあるのは周知の通りだが、営業損失は圧縮されつつあり、2011年度第4四半期の236億円から、2012年度第2四半期は57億円まで減少している。
早期退職による人員削減が完了する11月1日以降は、年間で約530億円の固定費削減が可能になる。単純計算でも、2012年度第3四半期は約88億円、2012年度第4四半期は約133億円、合計で下期の営業損益を221億円改善する効果が得られるわけだ。
実際にルネサスは、2012年度下期の業績について、売上高が4620億円、営業利益が465億円になると予想している。下期だけを見ると、8月2日に発表した収益基盤強化策実施後の目標である営業利益率10%以上を達成していることになる。2012年度通期でも、210億円の営業利益を予想している。下期にどこまで業績を改善できるかが、産業革新機構やKKR(Kohlberg Kravis Roberts)といったルネサスへの増資が噂(うわさ)されている投資ファンドとの交渉にも影響してくるだろう。
2012年度の中間決算発表では、通期の業績予想は据え置いたものの、下方修正の可能性に言及した。これは、欧州の債務・金融問題の長期化や、新興国の景気減速、日中関係の悪化による需要減が影響しており、「業績予想の修正が必要となった場合には、速やかに公表する」(ルネサス)としている。
下期の業績をけん引するはずだったのが自動車分野だ。自動車分野は、2012年度第2四半期の半導体売上高2053億円の約34%に当たる698億円を占める。第2四半期の半導体売上高を事業別内訳でみると、マイコンで55%、アナログ&パワー半導体で25%、SoC(System on Chip)で15%が自動車分野になっている。
しかし、この自動車分野の顧客である自動車メーカーや電装部品メーカーが、2012年度の通期業績を軒並み下方修正しているのだ。ホンダは2012年度の中間決算発表に合わせて、通期の売上高予想を10兆3000億円から9兆8000億円に引き下げた。デンソーやアイシン精機などの電装部品メーカーは、日本、欧州、中国での車両生産が当初見込みよりも減少すると想定している。
ルネサスの大口顧客であるトヨタ自動車や日産自動車は、まだ2012年度の中間決算を発表していないが、業績予想を下方修正する可能性は高い。このため、ルネサスの2012年度下期の自動車分野売上高が業績予想を下回るのは確実とみられる。民生用機器や産業用機器の顧客も業績は好調と言い難いため、自動車分野の売上高の落ち込みをカバーするのは難しい。
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