2012年度下期の自動車分野の売上高が、第2四半期よりも10%程度低下すると仮定すれば、営業利益を140億円前後引き下げる要因になる。ただし、この影響を含めたとしても通期で70億円の営業利益は達成できる。
この通期営業黒字を達成するための最後の砦となるのが、「アミューズメント向けSoCの大型カスタム案件」である。ルネサスは詳細を公表していないものの、このアミューズメント向けSoCは、任天堂が2012年12月8日に発売する次世代据え置き型ゲーム機「Wii U」向けの製品である。
任天堂が公開している、同社社長の岩田聡氏によるインタビュー記事「社長が訊く『Wii U』本体編」では、Wii U本体のメインプロセッサの開発について、「ルネサスさん、IBMさん、AMDさんから、本当に知恵をいただきました」というコメントが出ている。
Wii U本体のメインプロセッサは、IBMが45nmプロセスで製造するCPUダイと、AMDが設計し、ルネサスが製造するGPUダイを1個のパッケージに収めた、MCM(Multi Chip Module)となっている。異なるメーカーが製造したダイを1パッケージに組み込む事例はあまり多くはない。とはいえ、現行機である「Wii」で、CPUとGPUが別のパッケージであったことを考えれば、Wii U本体の小型化や消費電力の低減に大きく貢献しているはずだ。
ルネサスの合併前の1社である、旧NECエレクトロニクスは、「ゲームキューブ」や「Wii」のGPU製造を担当してきた。今回のWii U本体のGPU製造を受注できたのも、これらの実績が評価されたからだ。
ルネサスの2012年度第2四半期決算では、アミューズメント向けSoCの大型カスタム案件として、Wii U向けGPUの売上高が計上されている。SoCの売上高は、2012年度第1四半期の344億円から、2012年度第2四半期に550億円まで伸びており、増加分の206億円のほとんどをWii U向けGPUが占めていると考えられる。
ルネサスは、2012年度の中間決算発表で、「アミューズメント向けSoCの大型カスタム案件の売上高は、今後増えるものと期待している」とコメントしている。しかし、Wii Uの売れ行きが思ったほど伸びない場合には、その期待は裏切られることになる。Wii U発売後の第4四半期の売上高を押し下げる要因になりかねない。
ルネサスの業績予想修正は、自動車メーカーや電機メーカーの中間決算がまとまる11月中旬以降に発表される可能性が高い。どのような業績予想修正となるのか、注目が集まりそうだ。
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