安川電機は、SiC(シリコンカーバイド)デバイスを全面的に採用した次世代モータードライブシステムを開発した。Si(シリコン)デバイスを用いる同出力の従来品と比べて、システム全体の容積を25分の1に小型化したという。
安川電機は2012年8月7日、SiC(シリコンカーバイド)デバイスを採用した次世代モータードライブシステムを開発したと発表した。Si(シリコン)デバイスを用いる同出力の従来品と比べて、システム全体の容積を25分の1に小型化できたという。電気自動車(EV)の走行システム、ロボットの駆動装置、産業用インバータ、サーボドライブなどの用途に向けて、2014年度までの製品化を目指す。
開発したモータードライブシステムは、200Vの交流電圧を直流に変換する正弦波PWM(パルス幅変調)コンバータと、その変換された直流をモーター駆動に必要な交流に変換するPWMインバータから構成されており、いわゆるAC-AC変換器となっている。正弦波PWMコンバータとPWMインバータには、ローム製のトレンチ型SiC-MOSFETとSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)を用いたフルSiCパワーモジュールを採用。なお、同パワーモジュールもロームと共同で開発した。
モータードライブシステムは、出力が45kW、システム容積が約3l(リットル)。出力密度は15kW/lとなる。Siデバイスを用いる同社従来品(水冷方式)と比べると、システム容積を25分の1まで小型化できている。中でも、EVやハイブリッド車の走行用モーターを駆動するインバータにそのまま技術を展開できるPWMインバータ回路部の出力密度は、128kW/lを達成したという。
これまで発表されたフルSiCインバータの出力密度では、デンソーの60kW/l(関連記事1)、三菱電機の50kW/l(ニュースリリース)、次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)の40kW/l(関連記事2)といった事例がある。今回のPWMインバータ回路部の128kW/lという出力密度は、先述の3つの事例のように1つのシステムにパッケージングした結果としての数値ではないので単純には比較できないものの、十分に高いことは確かだろう。
安川電機は2012年1月、SiCデバイスを使ったEV用ドライブシステム「SiC-QMET」の改良版を発表している(関連記事3)。「今回の次世代モータードライブシステムのインバータは、改良版SiC-QMETで用いたものよりもさらに進化させている」(同社)という。
なお、この次世代モータードライブシステムの詳細については、電気学会産業応用部門大会(2012年8月21〜23日、千葉工業大学)で発表される予定である。
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