電気もガスと同じように、広域での電力融通に問題があることが分かった。電力の連系線を図示したものを見てみると、中部電力と東京電力間で線が細いことが分かる(図10)。
これはご存じのように、この間で電源の周波数が分かれているからである。これほど大規模な交流の周波数変換は技術的に難しく、これまで特に需要もなかったので大規模な変換設備もない。これからは大規模な変換設備を作るよりも、長期的な対策として電源周波数統一の議論がもはや避けられないだろう。
2011年5月に自民党の小坂憲次参議院幹事長(当時)が、電源周波数を今後25年間で統一する電力政策の改革試案をまとめている。これによれば、まず政府と全電力会社による「統一基金」を創設、これを財源に、
という工程だそうである。まだ試案なのでこれが実施されるわけではないが、スパンとしては妥当なところであろう。なぜならば、家電製品の寿命は大体10年ぐらいであり、多くの家電は既に50/60Hz共用になっているからだ。工場設備は、20年で設備投資の回収が終わっているか微妙なところではあるが、これから入れる設備は両周波数対応にしておけば問題は少ない。
この方策では、50Hz/60Hzどちらにするかということには触れていない。ただ前提として、どちらになっても困らないよう両対応の機器に切り替える期間を20年設けているわけで、この両周波数以外の周波数になるということは、基本的にないと思っていいだろう。
ただどちらになるかで、発電所の負担は西と東で大きく変わることになる。それも統一基金で全部収めるのだろうか。そして25年後には、東西どちらかの発電所が何らかの形でリニューアルすることになる。そのときにどのような発電施設が中心となるのか。
今後の発電施設の設計には、将来的に電源周波数が変わるかもしれないという点を視野に入れておくべきだろう。
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.