エネルギー白書2011では原子力の依存度を下げていくという方向が初めて打ち出された。ただし、再生可能エネルギーを増やすだけでは対応できない。ガスや電力の供給網を全国統一する他、オフィスビルの照明などに工夫が必要だ。
経済産業省がまとめた「平成22年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)が2011年10月28日に公開された。白書では、原子力発電について、中長期的に依存度を可能な限り引き下げていく、その代わりに再生可能エネルギーの開発と普及の強力な推進が必要、という今後の方向性があらためて確認されている。
既に原発の安全性に関する懸念はいろいろ出ているところだが、国として今後どのような方向性で行くのか、というビジョンが文書という形で出てきたことには、価値があろう。今回はこの白書を見ながら、エネルギーのネットワークに関する課題を考えてみたい。
今回の視点で参照する資料としては、概要が少ないページ数でよくまとまっているが、いかんせん解説が少ない。別途資源エネルギー庁から公開された「第1部 エネルギーを巡る 課題と対応」も見ておくといいだろう。
2011年3月11日の東日本大震災の被害として、原子力発電所と津波がクローズアップされている。しかし、石油精製所やLNG(液化天然ガス)基地も被災し、電力以外のエネルギー供給にも課題があることが分かった。図1は震災でガスの供給が停止した県を示している。震源地を中心に東北太平洋側の県で発生しているのは見て取れるが、千葉や埼玉、神奈川といった首都圏でも停止していたことが分かる。もちろん全面的に停止したわけではなく、一部地域での発生であろう。
最も被害が大きかったのは仙台にあるLNG基地(仙台市ガス局LNG基地)の被災だが、現在は新潟から広域天然ガスパイプラインを通じてしのいでいる(図2)。仙台市ガス局基地そのものの復旧は、1年近くかかると見積もっているようだ。ただ新潟は新潟で地震の多いところなので、これが盤石の対策というわけではないだろう。
現在、日本のガスパイプライン網は需要地ごとに分断されており、広域での融通が難しい(図3)。仙台の場合はたまたま新潟とつながっていたから良かったものの、細かく分断されている東海地方、中国地方辺りで災害が起これば、その地域のみ長期間都市ガスが止まる可能性もある。
プロパンなら各家庭にタンクを運べるが、ガス器具は都市ガスとプロパンで全く互換性がないため、被災したときだけプロパンに切り替えるわけにも行かない。都市ガスの広域供給ネットワークの整備が求められている。
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