風力発電には、2050年時点における全世界の電力需要の2割以上を満たす潜在能力がある。当然設備の需要も大きく、伸びも著しい。しかし、小さなモジュールをつなげていけばいくらでも大規模化できる太陽光発電とは違った難しさがある。効率を求めて大型化しようとしても機械技術に限界があったからだ。ここに日本企業が勝ち残っていく余地があった。
本連載の第20回では、風力発電の現状についてまとめた。今回はその中でも、洋上風力発電に改めてフォーカスする。
洋上風力は発電規模としてはまだ小さい。地上風力発電は既に2011年時点で234GW(全世界)。それに比べれば、まだ60分の1程度の4GWにすぎない(図1)。しかし逆に言えばまだこれから成長が期待できる。特にヨーロッパでの普及はかなり期待されるところであり、2025年ごろには洋上風力が100GW近くにまで成長するとみられている。
なぜヨーロッパか、という点に関しては以前にも解説したが、1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故以来、再生可能エネルギーに対して理解があることはもちろん、北海油田の産出量が限界に近づいていること*1)、地理的に偏西風が強く安定していること、イギリスやデンマークに囲まれた北海が遠浅*2)であることなどの条件が整っているからである*3)。
*1) 国際石油資本である英BPが2012年6月に公開した「BP Statistical Review of World Energy 2012」によれば、北海油田の生産量は2000年前後にピークに達している。最大産出国のノルウェーは334.6万バレル/日(2000年)が203.9万バレル/日(2011年)へと6割に減少。このような傾向は2位の英国(4割に減少)、3位のデンマーク(6割に減少)にも共通している。
*2) 北海の面積は75万km2と日本の国土の約2倍もあるが、平均水深は94mと浅い。
*3) 季節要因上、太陽光や太陽熱と互いに補完しやすいことも大きい(記事へ)。
洋上風力の普及が最も進んでいるのはイギリスで、国別シェアでは51%にも上る(図2)。イギリスも日本と同じ島国で、その沿岸部を3段階に分けて風力発電拠点を開発しており、現在では最終段階の「Round3」の開発に到達している(図3)。
沿岸部から先に開発を始め、Round3はかなりの沖合となる。現在稼働中の風車はほとんどが水深20m以内であるが、いくら遠浅とはいっても沖合に出ればそれなりに水深も深くなる。現在計画中のものでは、水深30〜40mになるようだ。
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