世界に勝つ日本の製造業、洋上風力発電の巻小寺信良のEnergy Future(23)(4/5 ページ)

» 2013年01月31日 09時50分 公開
[小寺信良,MONOist]

油圧ドライブトレインの工夫とは

 三菱重工業は、1980年から風力発電用風車の開発に着手し、これまで中小規模の風車を4000基以上、事業者に納品してきた。ギア方式やダイレクトドライブ方式も開発の経験がある。それでも大型化への課題解決のために、英国のベンチャーであったArtemis Intelligent Powerを2010年に買収し、油圧デジタル制御技術を入手した。今回の油圧ドライブトレインは、この技術がベースになっている。

 油圧ドライブトレインは、油圧ポンプ部と油圧モーター部から成り立っている。まず全体の構造を見てみよう(図6)。

図6 油圧ドライブトレイン方式 ナセルの内部を示した。3つの主要部品からなる。なお、図左先端に翼が付く。出典:三菱重工業

 油圧ポンプ部には、中央に翼の軸と直結した波形のリングがはめ込まれている(図7)。リングの周囲には小さな油圧シリンダが円形をなすように配置されている。波形のリングが回転すると、リングの山と谷によってシリンダがピストン運動を繰り返し、油圧を高めていく。

図7 油圧ポンプ部の構造 図左が油圧ポンプを輪切りにしたところ。灰色の部分が翼の軸と直結したリングであり、リングの周囲(図左では上部のみ描いた)に油圧式シリンダが配置されている(図右)。DDP:Digital Displacement Pump。出典:三菱重工業

 圧縮された高圧油は、パイプを伝って油圧モーターに流される。これも中心軸を囲むように小さいシリンダが配置され、その圧力でクランク状の軸を回転させる。軸の先には発電機があり、それを回すという仕組みだ(図8)。モーターとは言うものの、仕組みとしてはピストン運動を円運動に変換する、一般的なレシプロエンジンと同じだ。ガソリンエンジンの燃焼・爆発によるエネルギーの部分が、油圧の噴射になるだけである。

図8 油圧モーター部の構造 DDM:Digital Displacement Motor。出典:三菱重工業

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.