太陽電池といえばSi(シリコン)を使ったもの。確かに生産量ではシリコン太陽電池が過半を占める。しかし、シリコンよりも安価で使いやすい太陽電池もある。その候補の1つがCIS薄膜太陽電池だ。ソーラーフロンティアにCISの魅力を聞いた。
2011年12月5〜7日、幕張メッセにて「PV Japan2011」が開催されたので、出かけていった(図1)。日本国内だけでなく海外メーカーも参加する、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー全般に特化したイベントで、太陽電池の専門家ではない筆者にもなかなか実りが多かった。
さてその中で以前から気になっていたメーカー、ソーラーフロンティアに取材することができたので、太陽電池の特性や優位性などをまとめてみたいと思う(図2)。
この連載の8回目でお伝えした宮崎県都農町の「宮崎ソーラーウェイ」、この第二発電所で採用されたのが、ソーラーフロンティアの太陽電池モジュール「SC80-A」であった。宮崎県国富町にある同社の第3工場は、日立製作所のPDP(プラズマディスプレイ)製造工場を、一部の人材の再雇用を含めて譲り受けて太陽電池の製造工場に大転換した、非常にユニークな経緯がある。このあたりは撤退が続くPDP工場を抱える他社にも、興味のあるところではないだろうか。
太陽電池には使っている半導体材料によって幾つかの系統があるということは連載の第2回でも解説したところだが、現在太陽電池で主流とされているのは、結晶Si(シリコン)系である。高効率だが価格が高い単結晶シリコン、中国メーカーの参入で価格競争が激化している多結晶シリコンが、市場を賑わせている。
一方、薄膜系やシリコンを使わない化合物系は、変換効率の向上が目覚ましく、価格競争力があるということで、最近になって注目されているタイプである。
化合物系の最大手は米国のFirst Solar。生産規模は2011年の予測で約2000MWと、他の方式も含め世界最大規模である。CdTe(カドミウムテルル)太陽電池を製造している。
ただFirst Solarの太陽電池は素材に有害物質であるカドミウムを大量に使用するため、廃棄時に制限がかかる。有害物質の使用に厳しいのがヨーロッパ(EU)だが、太陽電池に関しては現在規制緩和されており、First Solarのパネルがよく採用されている*1)。ただ、現状は太陽光発電普及のために緩和されているだけであり、ある程度普及のめどが立ったところで規制対象となる可能性がある。
*1) EUの有害物質の使用制限指令(RoHS指令)はやみくもに物質を規制しているのではない。例えばEUはHg(水銀)の使用を厳しく規制しているが、水銀を利用する蛍光灯は条件付きで除外している。これは欧州では蛍光灯があまり普及していないためだ。白熱灯から蛍光灯へと転換することで、化石燃料の消費量を削減する方が、水銀の削減よりもメリットが大きいという判断である。
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