パナソニック コネクトに浸透する生成AI活用 前年比2.4倍の業務時間削減を達成イノベーションのレシピ(1/2 ページ)

パナソニック コネクトが社内向け生成AI活用イベントを開催。2023年2月から始まった同社内における生成AIの業務利用だが、その活用法はAIに「聞く」から「頼む」に変わりつつあるという。

» 2025年07月30日 07時30分 公開
[坪田澪樹MONOist]
パナソニック コネクトの樋口泰行氏 パナソニック コネクトの樋口泰行氏

 パナソニック コネクトは2025年7月18日、同社本社(東京都中央区)で開催した社内向けイベント「もっと使おう!生成AI活用夏フェス2025」を報道陣に公開した。同イベントでは、同社の自社向けAI(人工知能)アシスタントサービス「ConnectAI」の活用事例を各部署の代表者が説明した。なお、同社における社内向け生成AI活用イベントの開催は初めての試みとなる。

 イベント冒頭に登壇したパナソニック コネクト 代表取締役 執行役員 プレジデントの樋口泰行氏は「社内におけるさまざまなAI活用法を共有する良い機会になるだろう。互いに刺激し合い高め合ってもらえれば」と語る。

パナソニック コネクトにおけるAIの戦略と活用方針

 パナソニック コネクトは2023年2月から生成AIの業務利用を開始し、段階的に活用範囲を広げてきた。そして2025年7月からは、「業務AI」と呼ぶAIエージェントの活用に注力する方針を打ち出した。

パナソニック コネクトの向野孔己氏 パナソニック コネクトの向野孔己氏

 パナソニック コネクト AI & Data プラットフォーム部 シニアマネジャー 生成AIエバンジェリストの向野孔己氏は「「AIを使っている社員は生産性がぐっと上がる。社員がAIを使いこなして、一人一人の能力を最大限に発揮できる企業になりたいという思いがある」と述べる。

 2024年のパナソニック コネクト社員のAI利用実績は、利用回数が前年比約1.7倍の年間240万回、AI活用による業務削減時間は同2.4倍の44.8万時間、月間のユニークユーザー率は同14.3ポイント増の49.1%でほぼ社員の半数がAIを業務で活用している。なお、1回の利用当たりの業務削減時間は28分と大きく、AIを利用する場合としない場合で生産性に大きな差が出ているという。

パナソニック コネクト社員のAI活用実績 パナソニック コネクト社員のAI活用実績[クリックで拡大] 出所:パナソニック コネクト

 社員のAI利用が増えている要因としては、AI活用スキルの向上により「聞く」から「頼む」に活用方法が変化していることや、AI技術の進化によって画像やドキュメントの活用が進んだことが挙げられる。また、ConnectAIのプロンプトの入力可能文字数が、リリース当初の109文字から273文字まで増えたことも、AIに「頼む」という活用方法が増えた要因になっている。

ConnectAIに仕事を頼むと30秒で手順書を自動作成

 向野氏は「何かを作成するときにはAIに頼んでほしい」とイベントに参加した社員に訴える。例えば、「工場の部品棚卸手順書を表形式で作成してください」とAIに頼むと、30秒程度で表形式の部品棚卸手順書を出力してくれる。現在使っている手順書とAIが作成した手順書を比較することで改善につなげるという活用方法もあるという。

部品棚卸手順書の出力結果例 部品棚卸手順書の出力結果例[クリックで拡大] 出所:パナソニック コネクト

 直近で「需要が高すぎてたまにリクエストエラー表示が出てしまうぐらい」(向野氏)利用が拡大しているのが「ドキュメントで頼む」という活用方法だ。これは、ユーザーのファイルをそのまま使ってAIに仕事を頼めることが特徴であり、PDFやCSV、テキストなどさまざまな形式のドキュメントファイルをアップロードすることで簡単に利用ができる。使用事例としては、資料を読み込ませてからのQ&A作成、プレゼンテーション原稿の作成、専門家視点でのレビュー、自然言語によるデータ分析などがある。

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