パナソニック ホールディングスで生産技術を担当するMI本部 本部長の松本敏宏氏が一部報道陣の合同取材に応え、モノづくりの方向性について語った。
AI(人工知能)の普及や地政学的問題、労働環境の変化など、生産を取り巻く環境が大きく変化する中で、生産技術をどのようにつなぎ、育てていくべきなのだろうか――。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)で生産技術を担当するMI本部 本部長の松本敏宏氏が一部報道陣の合同取材に応え、モノづくりの方向性について語った。
パナソニックHD MI本部は、パナソニックHD直下にある3つの技術本部の1つで、もともとは1964年に生産技術研究所を源流としている。その後、生産本部として機械加工やオートメーションなど、事業共通の生産技術を開発し、それをグループ内に水平展開してきた。松本氏は「もともとは機械加工技術などを中心としてきたが、生産設備やソフトウェアなど幅は広がってきている」と生産技術としての変化を振り返る。
MI本部は、生産技術に精通した技術者集団として「新規モノづくりプロセス創出による社会変革」と「事業の競争力強化支援」の役割を担うことを目指し、事業側からの要求に応じた生産技術の開発に加え、生産技術だけを切り出して社外に製品やサービスとして展開することにも取り組んでいる。
「10年前くらいまでは生産技術はブラックボックス化するのが当たり前で、外部に見せることは考えてもいなかったが、時代の変化で変わってきた。そのくらいの時期までは電子産業ではとにかく軽薄短小を実現するための競争があり、生産技術でも競争力が発揮できていた。それが落ち着いて以降、競争軸が1つの方向性ではなくなり、新規商材を生み出す流れへと変化してきた」と松本氏は説明する。
パナソニックグループでは、材料や組み立てなどを含め、さまざまな製品を製造しているが、その中で新たなモノづくりプロセスを生み出していくために、基本的な生産群をまとめ、以下の12個の生産技術プラットフォームとして位置付けている。
12個の生産技術を組み合わせることで、新たな製品の製造に最適なモノづくりプロセスを短期間で実現することができる。また、一方で事業側で製造を進める中で必要になった技術などを新たにこれらのプラットフォームに取り込むことで、モノづくりを進化させてきた。
これらの仕組みを生かし、撤退した事業で抱えていた生産技術でも、パナソニックHD内でうまく取り込んでつないでいくことができている。例えば、生産技術プラットフォームの活用事例の1つとして、産業用インクジェット装置がある。これはOLED(有機EL)ディスプレイパネル製造用のインクジェット装置だが、「成膜」や「メカトロニクス」などのプラットフォーム技術を生かして開発された。2023年に経営破綻したJOLED(現在はJDIが取得)の有機ELディスプレイの製造用途で開発されたが、第71回大河内記念技術賞を受賞している。現在は他の領域での展開を検討しているところだという。
また、現在大きな成長が期待されているのが、AI半導体向け製造装置だ。これは、かつてパナソニック セミコンダクターソリューションズ(台湾Nuvotonに譲渡)で培ってきた半導体製造技術を活用したものだが、それに「実装」や「精密加工」「計測/検査」「シミュレーション/CAE」などの技術を加え、チップレット(複数の小さなチップを組み合わせてあたかも1つのパッケージのように機能を果たす技術)化で求められる中工程で使用できるようにしたものだ。「ハイブリッドボンディングという技術を開発しており、この技術を横展開して外部に販売できるのではないかと考えている」(松本氏)。
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