日本弁理士会は知的財産を活用した中小企業支援活動について発表した。
日本弁理士会は2025年7月23日、東京都内とオンラインで記者説明会を開催し、同会の知的財産経営センターによる「知的財産(知財)を活用した中小企業に対する経営支援活動」の内容を発表した。特許やデザイン、製造ノウハウなどの知的財産を活用する知財経営戦略を立案し、中小企業やスタートアップ企業の企業活動を支援する「弁理士知財キャラバン事業」の取り組みを中心に、企業が知的財産を所有/活用することについての重要性を伝えた。
弁理士知財キャラバン事業は、知的財産経営センターの代表的な取り組みであり、約7年実施しているコンサルティング活動である。
この活動の背景には、中小企業が新しいビジネスをスタートさせると、すぐに模倣されてしまい競争優位性が損なわれるという問題がある。この問題を解決するために、弁理士知財キャラバン事業では、知的財産の活用をクライアント企業に促すことで、継続的な競争優位性を構築し、結果として企業の業績アップにつなげている。
弁理士知財キャラバン事業におけるコンサルティングの流れは、まず初めに課題をヒアリングして企業分析をする。その後、クライアント企業と考えをすり合わせ、知的財産戦略を提案する。
また、弁理士知財キャラバンでは「事業承継支援版」の事業も展開している。事業承継支援版は2024年度にスタートした。これまでの事業承継では、知的財産の活用を含めての経営状況があまり考察されていなかった。これを考慮して事業承継支援版では、知財を事業評価に加味して事業承継の価値を高めることを目標にしている。
さらに、弁理士会では年1回の頻度で、「知財活用表彰」や「ビジネスプランコンテスト」といった、知財を活用した経営戦略に取り組む企業や新たなビジネスプランを創出した企業/人物を紹介して表彰するイベントを開催している。これらの表彰を通じて知財活用企業のモチベーションを高めて、知財活用の有効性を示す活動に取り組んでいる。
知的財産が企業の業績にどれくらいの影響を与えるのかについて、日本弁理士会 知的財産経営センター 統括副センター長の香坂薫氏が、特許庁が公開しているデータを用いながら説明した。
特許権について、特許権を所有する企業の従業員1人当たりの営業利益は、特許権を所有しない企業と比べて際に、製造業で約2.3倍、非製造業で約1.3倍高いという。
特に、将来のためにどれくらい研究費に投資をしているかを評価する指標の1つである「売上高研究開発比率」に大きな影響が出ている。特許権を所有する企業の売上高研究開発比率は特許権を所有しない企業と比べた際に、約32倍もの差が出ている。
商標権についても、商標権を所有する企業の従業員1人当たりの売上高営業利益率が、商標権を所有しない企業と比べた際に利益率が約1.5倍高い。さらに、商標権を取得するだけではなく、実際に使用している企業は、商標権を所有しない企業と比べて、利益率が約2.8倍高い。
香坂氏は「知的財産を所有し、活用することで良いことがある」と語り、企業における知的財産の重要性を伝えた。
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