ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は日本の貧困率について紹介します。
前回は家計の所得格差を表す「ジニ係数」の国際比較を行いました。今回は国民生活基礎調査とOECD Data Explorerから、日本の相対貧困率について紹介します。
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生活に困窮する人が、相対的にどれくらい存在するのかを表すのが「相対的貧困率(Poverty Rate)」です。国民生活基礎調査の用語の解説によれば、相対的貧困率は次のように定義されています。
可処分所得とは、所得の総額から社会保障負担、社会保障給付などの再分配を差し引きして、最終的に自由に使えるお金となります。可処分所得は世帯別に集計されますが、世帯人員の平方根で割ることで、1人当たりの所得水準と見なす調整をしたのが等価可処分所得と考えれば良いと思います。
等価可処分所得については連載の33回と34回で詳しくご紹介していますので、ぜひご一読ください。
相対的貧困率とは基準となる金額以下の所得しか得られない人の割合を示すものです。その基準の金額が貧困線と呼ばれ、具体的には等価可処分所得の中央値の半分となります。相対的貧困率が高いほど、困窮する人の割合が高いことになります。
それでは、実際の統計データを見ながら日本の相対的貧困率の状況を確認してみましょう。図1は日本の可処分所得に対する相対的貧困率について、年齢階級別の推移を表したグラフです。
全年齢の平均値が黒の実線、18〜65歳の現役世代の平均値を黒の点線で表現しています。日本の相対的貧困率は、おおむね10〜20%の範囲で推移していることが分かります。
全体の平均値としては2010年あたりまで徐々に上昇していましたが、その後はやや低下しています。主に現役世代の貧困率低下が寄与しているようです。
年齢階級別の傾向を見ると、18〜25歳と65歳以上の高齢世代が平均値を上回っています。それ以外の現役世代では低い水準で推移しています。18〜25歳の若年世代では学業などでそもそも仕事に就いていない人の割合が高いと考えられます。また、65歳以上の高齢世代では年金などの社会保障給付による所得が主になると推測できます。そのため、これらの世代は相対的に困窮する人の割合がやや高めになるということになります。
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