太陽光発電で大量の電力を得る方法は複数ある。太陽電池自体の変換効率を高める技術開発はもちろん重要だが、併せて太陽の光をよりたくさん得る努力が欠かせない。今回は「日射量」や太陽電池以外の周辺技術に焦点を当ててみよう。
発電設備としてのメガソーラー施設は、既にさまざまな事例が登場し、現実のものとなっている。前回は環境負荷に対する「エネルギーペイバックタイム」*1)の試算を幾つか紹介したが、既に方式によっては1年を切り始めており、環境負荷はほぼ問題にならなくなりつつある。
*1) 太陽電池の製造から輸送、販売、使用、さらに廃棄や再利用までに要する全使用エネルギーを、太陽電池からの発電だけで回収するのに要する期間をいう。
メガソーラー発電施設を運用する立場で考えると、大きな問題は投入コストの元が取れて利益が出始めるのはいつか、ということである。ここに明確な答えが現われれば、民間事業者も参入のめどが立つ。現在日本でメガソーラーといえるもののほとんどはいまだ実証実験的な意味合いが強く、国や自治体の補助金などが投入されていたり、企業のデモンストレーションを兼ねて設置されている例が多い。
いつ元が取れるか、すなわち損益分岐点はどこかという計算は、年々変動する複数の要素が絡むので、非常に難しい*2)。
*2) メガソーラーを建設してから運用を停止するまでの収支を、金利計算などを除外して単純化すると、以下のような式で表現できる。収支=(年間発電量×買取価格−管理費用)×運用年数−建設時の初期費用−撤去時の費用
損益分岐点に大きく影響を与えるのは、電力の買い取り価格である*3)。当初は再生可能エネルギーの開発促進のために、政治的判断によって買い取り価格は通常よりも高めに設定されるだろうが、ドイツなどの太陽光先進国の例を見ても、次第に下がっていくはずだ。
*3) 2012年7月1日に始まる「再生可能エネルギー固定価格買取制度」では、買い取り価格や買い取り期間を中立の第三者機関が決定することになっている。政府は2012年2月15日に第三者機関の人事を国会に提出した段階だ(国会同意人事に相当するため)。第180回国会の会期は2012年6月21日まで。
買い取り価格よりも予想しやすいのが年間発電量だ。年間発電量は太陽電池の変換効率と日射量で決まる。太陽電池の変換効率は、研究開発が進んでも突然、劇的に上昇することはない。高くても年に1ポイント程度上がるかどうか、といったところである*4)。
*4) 歴史のある単結晶Si(シリコン)や多結晶Siでは上がり方が鈍くなっており、化合物系や色素増感、有機薄膜は効率改善に勢いがある。(関連記事:未来の太陽電池をドイツ企業が開発、有機薄膜型で最高効率達成の図3を参照。緑色がSi系)。
太陽電池の製造コスト(初期投入費用の約半分を占める)は、比較的安定しており、量産効果によって少しずつ下がっているという状況である。ただし、Siに比べて研究開発の歴史が浅い太陽電池は例外だ。例えば化合物系に関しては突然製造コストが下がる可能性がある。
ある化合物系薄膜太陽電池では、実験中の事故で製造時に不純物が混入したものの、なぜかその方が効率が上がるという結果が出たという。そしてなぜ不純物がある方が効率が上がるのかに関してはっきりした理由が分かっておらず、現在も仮説の域を出ていない。ただ不純物が入っても平気ということは、製造ラインのクリーン度合いが下がっても問題ないということになり、結果的に製造コストも下げられることになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.