損益分岐点を縮めるためには、要するに年間発電量を増やせばよい。「年間発電量=変換効率×日射量」なので、変換効率を高めなくても、日射量を増やせばよいことになる。
まず設置場所の緯度が下がれば、それだけで年間発電量が増える。前回紹介したみずほ情報総研の資料にあったように、中欧と南欧で発電量が1.5倍も変わることが分かっている。
従って南北に長い日本で条件を考えれば、北海道に施設を作るより沖縄に作った方が有利だ*5)。さらに言えば、降雨降雪の多い日本海側も不利になる。2011年12月に千葉県で開催された「PVJapan 2011」に出展したソーラーフロンティアのブースでは、同社の太陽電池モジュールを採用した2つのメガソーラー施設を比較していた(図1)。新潟市(関連記事)と宮崎市(関連記事)を比較していたが、やはり冬場の落ち込みが足を引っぱり、1kW当たりの年間発電量を見ても約14%の差が出ている。
*5) 太陽電池の方式によっては太陽電池の表面温度(気温)が高くなると変換効率が下がるため、緯度の議論が単純に当てはまらない場合がある。
ソフトバンクが北海道帯広市と苫小牧市の合計3カ所にメガソーラーを前提とした実験施設を作っている(関連記事)*6)。各社の太陽電池の発電効率を比較する目的だが、既に同様の実験は産業技術総合研究所などでも進められている。これからこのような実験を始めたのは、北海道という地域特性に応じた性能を測定するためであろう。
*6) 実験施設を運営するSBエナジーは2012年1月31日から3カ所の実証実験データを公開している。瞬時値や日報、月報という単位でメーカーごとの発電量を閲覧できるため、天気や季節の変化がどのような影響を与えるのかが分かりやすい。
北海道ならまとまった土地があるので、土地代では有利、さらに気温も低いので太陽電池の温度上昇による効率ダウンを抑制できそうだ。ただ降雪による太陽電池への影響を考えたためか、かなりパネルの傾斜角が高くなっている。幾つかの施設と比較して考えると、ここまで傾斜角が高いと強風に弱くなるため、架台や基礎部分のコストがかさむだろう。最終的にどのような結論が出るのかまだ分からないが、ビジネスとしての損益が気になる実験だ。
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