米国には再生可能エネルギー研究で最先端を歩む研究所がある。National Renewable Energy Laboratory(NREL)だ。同研究所のStrategic Energy Analysis CenterにあるTechnology Systems and Sustainability Analysis Groupで、シニアアナリストを務めるアラン・グッドリッチ(Alan Goodrich)氏の意見は示唆に富む。
同氏は、2011年10月10日に "Solar Energy Mini-Series: Solar PV Manufacturing -- U.S. Competitiveness in a Global Industry" と題した講演をStanford Universityで行っている*2)。太陽電池のコスト競争力について中国と米国を比較分析したものだ。
*2)同大学のWebページで講演の録画を視聴できる。
結論は意外だ。グッドリッチ氏によれば、米国は太陽電池モジュールの製造拠点として競争優位にあるという。
中国の結晶Si太陽電池モジュールの製造コストは現時点で最も低い。さらに中国政府は太陽電池産業に対して、輸出優遇策を進めている。しかしながら、中国国内のインフレ率上昇によって、中長期的な優位性が衰えつつある。さらに米国は結晶Si太陽電池と薄膜太陽電池の製造比率がほぼ5:5となっていることに対して、中国は結晶Si太陽電池一本やり、いわばモノカルチャーであり、さまざまなニーズに対応しにくい*3)
*3)今回の提訴に加わったメーカー7社は全て結晶Si太陽電池に特化している。
同氏は製品の競争力に影響するさまざまな因子、原料Siからシステムまでのサプライチェーンや完成品の輸送、政府の政策、資金源、研究開発能力、知的所有権の保護、政府助成金について比較した上で、米国が優位にあるという結論を出した(図2)。中国企業の生産規模が米国の10倍ある現実を踏まえてもだ。
米国市場で競争劣位にある企業は、生き残れない。例えば、2011年8月に米国連邦倒産法第11章の適用を申請した米Solyndraは、円筒形の太陽光発電モジュールを主力製品としており、低価格な量産手法や設置手法を開拓する前に力尽きた形だ。
米国の太陽電池関連企業が倒産する姿ばかりが目立つが、米国国内の太陽電池産業全体は成長している。グッドリッチ氏の分析結果を踏まえると、関税障壁で対応しなくても、国内産業を支援する政策は複数考えられる。米国企業や、同じような攻勢にさらされている日本企業の未来は暗くない。
次回は、東欧の大国ウクライナの現状と将来を紹介する。
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