中国は再生可能エネルギー大国だ。世界一といってもよいだろう。特に、太陽電池や風力発電を語る際に欠かすことのできない国である。ただし、中国の再生可能エネルギー、特に太陽電池はバランスを欠いている。
化石燃料は利用すればするほど資源量が減り、価格が上がる限られた資源だ。一方、太陽光や風力、水力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーは、利用後も資源量が減らず、燃料代が高騰する心配も必要もない。2000年以前は、水力を除いて再生可能エネルギーを取り出す技術が未熟であり、政策上の支援も少なく、あくまでも「未来のエネルギー」という扱いだった。ところが、今や再生可能エネルギーは、世界各国で化石燃料をある程度肩代わりするところまで成長してきた。
どのような再生可能エネルギーを利用するのか、どの程度の規模を目指すのか、どのように普及させるのか、これは国ごとに異なる。地理的な条件や、技術の優位性、経済規模などが一様ではないからだ。本連載では再生可能エネルギーに力を入れる国を対象に、これらの疑問を解き明かしていく。
中国は世界最大の太陽電池製造拠点に成長した(図1)。太陽電池セルの年間生産量は、2008年以降、国別世界シェア1位を維持している。世界トップ10の企業リストには、中国企業であるSuntech Power(1位)やJA Solar(2位)、Yingli Green Energy(4位)、Trina Solar(5位)などが顔を見せている。これらの企業はいずれも2010年に1GW以上の太陽電池セルを出荷している。2010年には中国の太陽電池生産能力が8GWを超え、全世界の生産能力の5割以上を占めるほどだ*1)。
*1)European Photovoltaic Industry Association(EPIA)が2011年5月に公開した"Global Market Outlook for Photovoltaics until 2015"による。
ところが、太陽光発電の国内導入量に目を向けると、全く異なる様相が見える。全世界の導入量のうち、中国は3.1%(2010年)を占めるにすぎない。European Photovoltaic Industry Association(EPIA)によれば、2010年、中国に導入された太陽光発電は全世界の導入量16.6GW(累計導入量40GW)のうち、520MW(累計導入量893MW)だ。中国は生産した太陽電池のうち、わずか6%だけを国内で消費し、94%を輸出している形だ。
潤沢な電力が中国国内で得られるのであれば、輸出偏重でも構わないだろう。しかし、中国は電力問題で苦しんでいる。2006年以降消費電力は年間10%以上の割合で増加*2)しており、2010年には4兆kWhを超えた。旺盛な電力需要の伸びに供給が追い付かず、需給バランスを維持するために、一部地域で計画停電を導入しているほどだ。
*2)2009年は発電容量が伸びなかったため、消費電力がほとんど増えていない。
中国の発電設備容量は、2010年時点で9億6219万kW(962GW)。内訳は火力(73%)、水力(22%)、風力(4%)、原子力(1%)*3)。火力に頼っていることが分かる。
*3)なお、2004年時点の発電設備容量(2億1937万kW)の比率は、火力(81.7%)、水力(16.0%)、原子力(2.3%)だった。2004年以降、火力よりも、水力を増強したことになる。
火力はほとんどが石炭火力である。中国は石炭の生産量、消費量とも世界一であり、石炭火力発電の増設でこれまで電力需要をまかなってきた。しかし、需要増に引きずられて石炭価格が上昇し続けていること、大気汚染などが無視できなくなっていることなどから、石炭に頼ることが次第に難しくなってきた。
中国は2009年時点で世界第5位の産油国だが、2011年には石油消費量の約5割を輸入に頼っている。石炭がだめなら、石油へという対応も難しい。化石燃料への依存度をこれ以上高めることはできないだろう。
化石燃料を肩代わりできそうなエネルギー源として、中国政府は再生可能エネルギーに力を入れている。
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