本気を出した中国、風力に次いで太陽光でも飛躍世界の再生可能エネルギー(1)(2/3 ページ)

» 2011年08月18日 13時20分 公開
[畑陽一郎@IT MONOist]

順調な風力発電

 これ以上依存できない化石燃料。こうした状況を打ち破る切り札が、水力を中心とする再生可能エネルギーだ。中国政府は総発電容量に占める再生可能エネルギーの比率を2020年までに3割に高める政策を打ち出している。

 中国では水力発電と風力発電が再生可能エネルギーの優等生だ。

 水力発電所の能力は高い。長江に設置された世界最大の水力発電所である三峡発電所は、2003年から32基の発電機を順次設置、起動している。出力は既に20.3GWに達しており、2011年末には全ての発電機の起動が完了し、22.5GWの最大出力に達する*4)。三峡発電所以外にも多数の水力発電所を計画、建設中だ。

*4)三峡発電所の年間発電量は100TWh(1000億kWh)に達すると見られる。これは東京電力の年間販売電力量(2009年)の35%に相当する。

 風力発電も順調に伸びている。世界風力エネルギー協会(Global Wind Energy Council、GWEC)の発表によれば、2010年12月時点の全世界の風力発電の設備容量194.4GWのうち、中国(42.3GW)が22%を占めている。国別では最も多い。2010年に全世界で新規に導入された風力発電は35.8GWであり、中国はこのうち約5割を占める。導入規模が大きく、伸びも著しいということだ*5)

*5)中国は洋上風力発電にも力を入れており、2010年6月時点でイギリス、デンマーク、オランダ、スウェーデンに次いで世界5位(104MW)である。

太陽光発電をどう伸ばすか

 太陽光発電の導入量は、水力、風力と比べて大きく見劣りがする。最大出力22.5GWの三峡発電所や年間導入量18.9GWの風力発電と比べて、0.5GWという太陽光発電の年間導入量はいかにも規模が小さい。

 中国政府は太陽光発電の導入量を飛躍的に高めようとしている。2009年末、国家発展改革委員会(NDRC:National Development and Reform Committee)は、2015年までに太陽光発電の累積導入量を5GWとするという政策目標を明らかにした。2011年には、目標を2倍の10GWに高めた。

 目標を達成するための政策も打ち出してきた。2009年3月には国家規模の助成金政策「金太陽示范工程」*6)(Golden Sun Programme)を導入し、屋根置き型の太陽光発電と建物一体型システムを、3年間で合計500MW以上導入しようとした。出力300kW以上のシステムのうち、行政区域ごとに助成対象を政府が選択する助成金政策である。その結果、20MWのメガソーラーをはじめ、200箇所の建物一体型太陽光発電の導入に成功している。だが、これでは規模が小さい。

*6)「陽」は、正しくはこざとへんに日。

 中国政府は太陽光発電の導入量をさらに増やすために、2009年から固定価格買い取り制度(FIT:Feed-In Tariff)を検討し、部分的な導入を試みてきた。例えば江蘇省である。江蘇省はSuntech Powerなど多数の太陽電池セルメーカーが集まり、太陽光発電を導入しようとする企業が多い。

 江蘇省の制度では、3種類の買い取り価格を設定した。地上設置型は2.15元/kWh、屋根置き型は3.7元/kWh、ビル一体型は4.3元/kWhである。設置場所に応じてFITの買い取り価格を細かく変えている。買い取る容量には上限があり、2011年までに400MWである。制度導入後3年後に買い取り価格を引き下げるとしていたが、買い取り期間は明示されていない。

 これらのさまざまな試みの後、2011年7月24日に、中国初の全国規模のFITに関する文章を国家発展改革委員会が発表、太陽光発電の普及策がようやく整い始めた形だ。

 「太陽光発電の電力価格政策の通知」と題された1ページの短い文章には、4項目が記されている。第1項には買い取り対象と買い取り価格がまとまっている。2011年7月1日以前に着工が認められ、2011年12月31日までに運転を開始する太陽光発電に対して、1.15元/kWhという買い取り価格を定めた。この期限に間に合わないものは、チベットを例外として、1元/kWhとする。技術の進歩などにより、買い取り価格が将来変化するかもしれないとも記されている。

 第2項では対象となるシステムの発電コストから、FITの適用を除外する条件について触れている。第3項と第4項では、脱硫石炭火力発電の発電コストと比較した除外条件について記している。

 それでは、全国規模のFIT導入によって、どの程度、太陽光発電の導入量が増えるのだろうか。

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