幾何公差同士の相互関係
例えば、ある面に直角度を指示した場合を考えてみましょう(図5)。
このデータムAに対して直角度が指示された面には、平面度が指示されていません。それでは、独立の原則のように直角度と平面度を別々にして考えてもいいかというと、そうではないのです。
この直角度の示す範囲を図示してみます。図6のように直角度0.05を守るには、平面度も0.05以下でないと直角度の領域からはみ出してしまいます。
次に、ある面に対し、輪郭度公差を指示した場合を考えてみましょう(図7)。
この面の輪郭度が指示された面には、データムAに対する平行度や平面度が指示されていません。面の輪郭度の示す範囲を図示してみます(図8)。
図8のように、上面の高さ位置を表す面の輪郭度0.05を守るには、データムAに対する平行度と平面度のどちらも0.05以下でないと面の輪郭度の領域からはみ出してしまいます。
以上のことから、幾何公差には下記の相互関係があることが分かります。
形状公差 < 姿勢公差 < 位置公差
Form < Orientation < Location
つまり、姿勢公差を指示するということは関連する形状公差を含み、位置公差を指示するということは関連する姿勢公差と形状公差を含むのです。
上記の関係を暗記しやすくするため、それぞれの英語の頭文字を利用して、F<O<Lの相互関係と覚えておきましょう。
従って、機能上必要がある場合には、下記のようにそれぞれの幾何特性を細かく指示することも可能です。
特に理由がない限り、図9のように姿勢公差や形状公差まで細かく指示する必要性はなく、図7のように、面の輪郭度を満足させれば、自動的に平行度や平面度は小さくなると考えます。
このように幾何公差はロジカルに展開できることを知っていただければと思います。
全10回にわたった「製図を極める! 幾何公差徹底攻略」は、これにて終了です。「カタチが崩れる」といい出したら、ありとあらゆる面が崩れることになってしまいます。そう考えると全ての部分に幾何公差が必要になってしまい、逆に幾何公差が使えなくなってしまいます。
まずは、寸法公差でどうしても制御できないカタチの崩れから、幾何公差を使ってみてはいかがでしょうか。
幾何公差は、いい出したらきりがないほどへ理屈をいうことが可能です。
幾何公差を使いこなすポイントは、頭の中で「へ理屈」を考えつつ、それを口に出さないことです!
ある程度常識の範囲内で加工によるカタチの崩れを予測し、“いかに単純に幾何公差を指示するか”に尽きると思います。
読者の皆さんが、正しい幾何公差の作法を身に付け、グローバル対応できる図面が描けることを願って、あいさつに代えさせていただきます。(See You!)
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