携帯電話を使って外出先から自宅のエアコンをオン。便利だからこそ安全に使いたい、そんな生活インフラ機器への脅威を解説。
前回紹介した「『プラグアンドプレイ接続』に潜む脅威と注意点」に引き続き、今回は「生活インフラとの接続に潜む脅威と注意点」について解説します。
なお、調査方法や接続事例については前回の1ページ目、またはIPAが公開している調査研究の報告書を参照してください。
これまでの家庭内ネットワークには、PCや情報家電がつながっていましたが、最近ではこれら以外のさまざまな機器が接続されるようになってきました。例えば、空調機器やドアの施錠システムなど、これまでネットワークに接続されることがなかった機器が、ネットワークに接続されることで新しいサービスを利用者に提供するようになっています。また、以前は家庭内ネットワークとはまったく別の配線によって接続されていた機器同士が、家庭内ネットワークを介して接続されるようになってきています。これらは、機器に新しい付加価値を付けて、利用者により便利な使い方やサービスを提供することを目的としている場合や、家庭内ネットワークという1つのネットワークを介してすべての機器をつなげられるようにすることで、家庭内の配線工事と手続きに掛かる手間や費用を抑えることを目的としている場合など実にさまざまです。
このように、家庭内ネットワークにあらゆる機器が接続されることにより、これまで互いに接続されることがなかった機器同士が接続されたり、あるいは接続可能な状態になったりします。また、生活インフラにつながる機器や生活インフラと一体となって動作する機器(以下、生活インフラ機器)の中には、テレビや携帯電話から操作可能になっているものもあります。このように家庭内のありとあらゆる機器が1つのネットワークに接続され、すべての機器が利用者の手元にある操作用のコントローラーなどで操作できるようになると、利用者は大変便利で快適な生活を送ることができます。
しかし、生活インフラ機器の中には、テレビなどのAV家電やPCなどと異なり、万が一誤動作を起こすと利用者に身体的な危害や生命にかかわる危険をもたらす可能性の高いものが多く含まれています。このような機器がネットワークを介して組み込み機器と接続されると、不正な接続や操作、あるいはウイルスの混入などにより、甚大な被害を引き起こす可能性もあります。
では、組み込み機器を生活インフラに接続する利用シーンとそこに潜む脅威について見ていきたいと思います。はじめに、以下の各組み込み機器を例に生活インフラに接続される事例を挙げます。なお、各組み込み機器がやりとりする情報(データ)は、生活インフラ機器の現在の状態やこれらの機器に対する制御信号、監視カメラ画像などを想定しています。
機器の種類 | 説明 |
---|---|
ネットワーク対応テレビ | ネットワーク経由で、ほかの機器とつながってそれらの機器の操作画面を表示したり、状態が変化したことを画面に表示して利用者に通知したりすることが可能なテレビ |
ネットワーク対応お風呂湯沸かし器 | ネットワーク経由で、お湯を沸かすように指示をしたり、お湯が沸いたらリビングのネット対応テレビなどに通知したりする機能を持つお風呂湯沸かし器 |
ネットワーク対応エアコン | ネットワーク経由で、オン/オフ、温度設定、タイマー設定などができるエアコン |
ネットワーク対応ドア | ネットワーク経由でロックやアンロック、施錠状態の確認が可能なドア |
ネットワーク対応カメラ | ネットワーク経由で自宅の様子を監視することが可能なカメラで、遠隔操作も可能 |
インターネット接続機能付き携帯電話 | インターネット接続機能を持ち、利用者がどこにいてもインターネットを介して、家庭内の機器へ接続可能とする携帯電話 |
表1 生活インフラ機器および生活インフラとつながる機器 |
ネットワーク対応テレビとネットワーク対応お風呂湯沸かし器が連携することで、テレビ視聴しながらリモコンを操作してお風呂を沸かす指示をしたり、お風呂が沸いた通知をテレビ画面に表示させたりします。お風呂湯沸かし器に限らず、ほかの機器もすべてネットワーク対応テレビと連携することで、利用者はテレビの前に居ながら家庭内のさまざまな機器を操作できるようになります。
ネットワーク対応エアコンを家庭内ネットワークにつなげておくと、帰宅前に会社のPCからインターネット経由でエアコンの温度調節をしたり、外出先から携帯電話でエアコンのオン/オフを操作したりすることができます。こうすることで、自宅に戻るころにはリビングルームや寝室の室内温度を快適な状態に設定することが可能です。
ネットワーク対応ドアをインターネットにつなげることで、外出時に携帯電話や会社のPCから自宅の鍵の開閉をチェックしたり、施錠したりすることができます。また、ネットワーク対応カメラを自宅に設置することで、外出先から携帯電話やPCを使って自宅の様子を確認できます。さらに、自宅のドアが開いた場合には携帯電話などに電子メールで通知するようにしておくことで、不審者の自宅への侵入をチェックすることができ、いち早く警察や警備会社に通報することが可能になります。
自動車メーカーが標準装備しているカーナビの場合、自動車の制御系システムから情報を取得してカーナビの表示や制御に利用するような製品が存在します。さらにこのような情報を携帯電話などの通信回線を使って自動車メーカーがカーナビメーカーの運用するサーバに通知し、サーバで集計したデータのフィードバックを受けることで、道路の工事情報や渋滞情報を的確に表示することが可能になります。
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