最近は複数の組み込み機器同士で音楽などのコンテンツをシームレスに共有できるが、この利便性の裏には脅威が潜んでいる!?
近年、国内でのインターネット世帯普及率は9割近くとなり、その半数以上がブロードバンド回線を利用しているといわれています。また家庭内では、Wi-Fiなどの無線LAN(Local Area Network)の普及が進み、最近ではPLC(Power Line Communications:電力線通信)などの配線不要な新たな通信手段も登場してきています。
そして、このようなネットワーク環境に「情報家電」「カーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)」「携帯電話」などの複数の組み込み機器が接続され、それぞれの組み込み機器の間でデータのやりとりがなされたり、互いに連携して動作するようになってきています。例えば、自動車ではカーナビで、屋外では携帯電話で、自宅に帰ればテレビやパソコンで音楽や映像コンテンツを視聴するといったシームレスな利用が可能になりつつあります。
その半面、さまざまな組み込み機器がネットワークを介して自在につながることで、組み込み機器に記録された個人情報がネットワークやほかの組み込み機器を介して拡散したり、思いもよらないところでプライベートな情報が他人に見られたりするといった懸念があります。このため、利用者が安心して情報家電などの組み込み機器とほかの機器とを連携させて利用できるように、組み込み機器同士の連携におけるセキュリティ上の弱点を早急に明確にして、それを解消する必要があります。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)では2007年度の調査において、情報家電、カーナビ、携帯電話という代表的なネットワーク対応の組み込み機器について調査と分析を行い、これらの組み込み機器同士がつながることで発生するセキュリティ上の脅威を洗い出して、整理を行いました。そして、2008年1月に脅威に対するセキュリティ対策の方向性を示した「複数の組込み機器の組み合わせに関するセキュリティ調査報告書」を公開しました。
本連載では、この調査研究の結果、明らかになった組み込み機器同士の連携で想定される脅威と注意すべきポイントについて解説していきます。
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⇒ | 連載:組み込みシステムに迫りくる脅威 |
まず、IPAの調査研究における調査の進め方を以下(図1)に示します。
この調査により、「組み込み機器同士の連携事例とその特徴」と、そこから浮かび上がってきた「脅威を引き起こす可能性のある利用シナリオ」を得ることができました。
一般的に情報家電、カーナビ、携帯電話の各組み込み機器の連携は図2のようにさまざまな形で実現されています。
そこで、情報家電、カーナビ、携帯電話の各組み込み機器同士の連携について整理するため、これらの組み込み機器が連携している先進的なアプリケーション事例を収集・整理し(図1の(1))、用いられているネットワーク技術やサービスの発展動向の調査(図1の(2))を行いました(調査の詳しい内容は、IPAの報告書付録[PDF]をご覧ください)。
この調査で明らかになった連携事例を整理すると情報家電、カーナビ、携帯電話の各組み込み機器は、図3のように接続されていることが分かります。
これらの組み込み機器同士の接続について情報家電、カーナビ、携帯電話ごとにまとめると、以下のような事例が存在します(図4)。
そして、各事例の特徴に注視してみると、以下のことが浮かび上がってきます。
これらの特徴から、それぞれの機器と利用される場所には図5のような関係があることが分かります。
このように、家庭に設置されている情報家電、自動車に設置されているカーナビ、そして公共空間を介して家庭と自動車の間を利用者とともに自由に移動する携帯電話がそれぞれ連携する利用環境では、「利用者の知らぬ間に、自動的につながる」「利用者が想定していない機器までつながる」といった特徴が見られます。IPAの研究委員会における検討(図1の(3))の結果、以下の4つの利用シナリオにおいてそれぞれ脅威が潜んでいることが明らかになりました。
なお、ここでいう“脅威”とは情報家電、カーナビ、携帯電話の各組み込み機器が連携する利用環境において、
などを指します。
そして、IPAの検討委員会でこれら4つの利用シナリオそれぞれについて、そこに潜む脅威を具体的に列挙し、脅威が発生しないようにするために組み込み機器の設計者や開発者がどのような点に注意すればよいのかについて検討(図1の(4))を行いました。
第1回である今回は「プラグアンドプレイによる接続」に潜む脅威とその注意点について詳しく解説していくことにします。
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