心臓での抗がん剤の副作用を再現、微細加工技術応用のマイクロ流体デバイスで:医療機器ニュース
京都大学は、微細加工技術を駆使した生体外ヒトモデル「Body on a Chip」の開発に成功した。患者や健常者、実験動物などに頼ることなく、薬の効能・効果や毒性を評価できる。
京都大学は2017年7月31日、微細加工技術を駆使した生体外ヒトモデル「Body on a Chip(ボディー・オン・チップ)」の開発に成功したと発表した。同大学高等研究院 物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)の特定拠点准教授である亀井謙一郎氏らの研究グループによるもので、患者や健常者、実験動物などに頼らず薬の効能・効果や毒性を評価できる。
同チップは、複数の組織を単一チップに搭載した生体外ヒトモデル。従来の単一組織モデル「Organ on a Chip(組織チップ)」とは異なり、生体内における組織間相互作用を生体外で再現できる。
同研究では、マイクロメートルほどの小さいものを高精度に加工できる微細加工技術を応用した「マイクロ流体デバイス」に着目。ヒトの体の中の血管網や組織の模倣できるため、同デバイス上にヒト由来のがん細胞と正常な心筋細胞を搭載し、組織間を接続可能にした。
このがん細胞に、心筋に与えても毒性のない抗がん剤を投与したところ、がん細胞が死滅した。また、その時できる代謝物が心筋細胞に到達し、ダメージを与えていることを確認。同デバイス内で、従来の細胞培養プレートなどでは再現が困難だった抗がん剤の心臓における副作用を再現することに成功した。
同成果は、チップ上で複数の組織を接続し、相互作用の確認に成功した世界初の例となる。同研究の成果は、同月25日に英科学誌「RSC Advances」電子版で公開された。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 微細切削加工による世にも奇妙なアートたち
設計者が通常、直接見る機会を得づらいだろう加工の現場を取材していく。自分の設計した部品が、いったいどのような方法で具現化されているのか、実感するためのヒント提供はもちろん、モノづくりの純粋な楽しさも伝えられれば幸いだ。(編集部) - 微細加工技術を医療に生かす、アルプス電気のマイクロ流路
アルプス電気は「MEDTEC Japan 2014」で、マイクロ流路などを医療向けに提案した。微細加工が必要なもので、同社が電子部品で培ってきた金型微細加工技術を、医療分野にも応用したい考えだ。 - 脳梗塞領域に血管を誘引する人工細胞足場、脳の修復や再生に寄与
東京医科歯科大学は、脳梗塞領域に血管を誘引するスポンジ形状の人工細胞足場を開発した。一度損傷を受けると再生しないとされていた脳の修復/再生に寄与する成果で、再生医療への展開が期待される。 - がん組織周辺で抗がん剤を合成・放出する糖鎖高分子ベシクルを開発
京都大学は、物質透過性を持つ糖鎖高分子ベシクルを開発した。がん組織周囲で抗がん剤を合成し、放出する医療ナノデバイス(ナノファクトリー)として機能する、初めての材料となる。 - 炎症が起こりにくい皮膚貼り付け型ナノメッシュ電極、筋電位の取得も可能
東京大学は、1週間皮膚に貼り続けても明らかな炎症反応が見られず、装着感がないほど超軽量で極薄のナノメッシュ電極を開発した。