東京大学は、1週間皮膚に貼り続けても明らかな炎症反応が見られず、装着感がないほど超軽量で極薄のナノメッシュ電極を開発した。
東京大学は2017年7月13日、1週間皮膚に貼り続けても明らかな炎症反応が起こらない、超軽量で極薄のナノメッシュ電極を開発したと発表した。同大学大学院 工学系研究科 教授の染谷隆夫氏らの研究チームと、慶應義塾大学医学部の天谷雅行教授らの共同研究によるもので、成果は同月17日に、英科学誌「Nature Nanotechnology」のオンライン速報版で公開された。
今回開発されたナノメッシュ電極は、生体適合性に優れた金と高分子(ポリビニールアルコール)に、ナノサイズのメッシュ構造を持たせたものだ。シート状に作製したナノメッシュ電極を皮膚の上に載せて、霧吹きなどで水を吹きかけるだけで簡単に皮膚に貼り付けることができ、指紋や汗腺などの微細な凹凸に沿って形成できる。
同電極を20人の被験者に装着してパッチテストしたところ、1週間連続で装着しても明らかな炎症反応はなかった。一方、比較用に試験をした薄膜フィルムとゴムシートの場合は、わずかな炎症反応が認められた。装着感についてのアンケート調査でも、装着時の不快感が最も少なかったのはナノメッシュ電極だった。
そこで、これら3つについて水蒸気透過性試験を実施したところ、ナノメッシュ電極は群を抜いて高いガス(水蒸気)透過性を持つことが分かった。このことから、1週間装着しても本来の皮膚呼吸が可能で炎症反応を起こさないため、不快感を少なくできることが明らかになった。さらに、同電極を人差し指の関節に貼り付け、指を1万回屈曲させたが、電極は高い導電性を維持していた。
また研究グループは、同電極を生体電極として用いて、筋電位(筋肉が収縮する際に発生する電気信号)を取得することにも成功。得られた信号は市販のゲル電極によって取得した信号と比較しても遜色なく(ノイズレベル10μV以下)、皮膚の上の温度や圧力なども正確に計測できる。研究グループは、指先に貼り付けた同電極とワイヤレスユニットを組み合わせ、タッチセンサーの作製にも成功している。
この成果により、医療・介護の現場では患者への負担を軽減し、スポーツの場面では選手の運動に影響を与えることなく、動作や生体情報の正確な計測/解析が可能になるなど、今後さまざまな応用が期待される。
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