東京大学は、大気中で安定して動作する、超柔軟で極薄の有機LEDを開発した。貼るだけで皮膚がディスプレーになるほか、有機光センサーと共に集積化することで、貼るだけで血中酸素濃度や脈拍の計測ができる。
東京大学は2016年4月18日、同大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授、横田知之講師らの研究グループが、超柔軟で極薄の有機LEDを開発し、大気中で安定的に動作させることに成功したと発表した。血中の酸素濃度を皮膚上に表示するe-skin(電子皮膚)ディスプレーや、心拍数を測定できるセンサーなどへの応用が期待される。
今回、超柔軟有機LEDの大気安定動作を可能にしたのは、水や酸素の透過率の低い保護膜を極薄の高分子基板上に形成する技術と、極薄の高分子基材に損傷を与えず、透明性電極の酸化インジウムスズ(ITO)を成膜する2つの技術だ。
これらの技術を基に、高性能な有機LEDを極薄の高分子フィルム上に作製。くしゃくしゃに曲げられる超柔軟性を維持したまま、大気中で安定的に動作させることに成功した。基材には、厚さ1μmの生体適合性に優れた高分子フィルム「パリレン」を使用。基材や保護膜を含むディスプレー全体の厚みは3μmで、皮膚のように複雑な形状をした曲面に追従して貼り付けることができる。ディスプレーやインディケーターとして使用できるため、ヘルスモニタリングセンサーと連動させれば、血中酸素濃度などが表示可能になるという。
また、極薄の高分子フィルム上に有機LEDと有機光検出ダイオード(PD)(有機光センサー)を集積化する技術も開発した。指の先端に巻き付けることで、装着感もなく、心拍数や血中酸素濃度(測定範囲90〜99%)を1分以上、安定的に計測することに成功した。
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