今回の自動化では、中央支社におけるケース品の取扱量の90%が自動化され、ピッキング作業の人員は4人から1人に削減された。また、対象工程では出荷検品作業をゼロ化した。さらに、人と車両を分離した運用と自動化によって、労災リスクや作業者の身体的負担も低減した。
この成功には分析に基づく“割り切り”があった。中央支社で扱う品目は約860に上る。しかし、全品目の自動化を目指すとコストと複雑性が大きくなりすぎる。そこで東電物流は、過去1年間の全出荷データを調べ、分析した。
その結果、年間約10万個の出荷ケースのうち、わずか50品目(全品目の約6%)が出荷個数の9割(約9万個)を占めていることが分かった。また、特定の主要資材(例えば、特定のケーブル資材)が、1品目で年間1万2000箱(全体の約12%)に達することも分かった。つまり、完全自動化を目指さなくても、これらを自動化すれば、それだけで大幅に人の負担が減る――。そう考えたのだ。
この選択と集中に基づいて、1日1箱しか出ないような残りの品目については「人で作業する」とした。実務的な「割り切り」によって、投資対効果を最大化させたのである。
ロボット導入による副次的効果も得られた。業務の言語化と構造化だ。ロボットは曖昧で適当な指示では動かない。ロボットを動かすためには、人が長年の経験で培ってきた「重い箱は下にする」「バーコードはカメラが読みやすい向きに置く」といった暗黙知を、全て明示的に書き出して指示する必要がある。
この作業が想定外の効果をもたらした。ベテランが書く「人間向けのマニュアル」よりも、ロボットのために組み上げられた「1から100までの手順書」の方が、新人教育において理解されやすかったのだ。人の指示には「感覚的な飛び」があって、どうしても抜けが生じる。だが、ロボットへの指示では許されない。このプロセスが、結果的に組織の知的資産を可視化したのである。
導入当初、中央支社の現場では「自分たちの仕事が奪われるのではないか」と考えていた人もいたという。しかし、調整のために自動化システムを2週間停止した時期があった。すると現場からは、「いつ動くんですか? 早く動かしてください」という声が上がったという。一度、重量物の搬送のような厳しい業務から解放されると、人は元には戻れないのである。東電物流では、以前にも別のAGVを導入したことがあったが、その時とは対照的だった。いわば「(電力)インフラを支えるためのインフラ」として、物流ロボットが機能しているのである。
東電物流は今後、倉庫の集約化と、AGF(自動フォークリフト)を含むフルオートメーション倉庫の構築を視野に自動化を進めていきたいと考えているという。理想は、保管から出荷までを人間の介在なしで行う知能化倉庫である。ただし、そのためにはコストがかかる。
また、真の効率化のためには「物流側だけの努力では限界がある」とも考えているという。東電物流は今後、メーカーや荷主に対し、ロボットが扱いやすい梱包形状や荷姿への標準化を働きかけていきたいと考えている。物流側からサプライチェーンの川上へフィードバックしていくのである。
労働力不足は今後ますます加速する。今はなんとかなっていても、限界を迎えるのは時間の問題だ。東電物流とMujinは今後も「ライフライン・ロジスティクス」の確立を目指して取り組みを進めていく。
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