Armの最新動向について報告する本連載。今回は、2026年3月にArmが発表した、同社が初めてCPUチップそのものを製造/販売する「AGI CPU」を解説するとともに、顧客やパートナーにどのような影響を与えるのかを考察する。
英Armは2026年3月24日にハイブリッド形式で「Arm Everywhere」と題したイベントを開催。同社として初のCPUチップである「AGI CPU」を発表した。発表の模様はYouTubeで視聴できるが、この内容を改めてご紹介したいと思う。
まずは発表内容を簡単に説明したい。Arm CEOのレネ・ハース(Rene Haas)氏は、昨今のAI(人工知能)ブームの中で、CPUの重要性が薄れてきているという見解をまず一蹴した(図1)。
図1 マーク・トウェインの“The reports of my death are greatly exaggerated(実際は従兄弟が重体になっただけなのに、自身の死亡報道が流れたことに対して、新聞社に送った手紙の中の有名なフレーズ)”をもじって、CPUの重要性がまだ高いとアピール[クリックで拡大] 出所:Arm一例として、生成AIでは確かにCPUよりアクセラレータの比重が大きくなっている(図2)が、AIエージェント(Agentic AI)においてはトークンの送出量が人間の15倍にも及び、結果としてアクセラレータを制御するCPUがボトルネックになってしまうと指摘した(図3)。
その後に突如として発表したのがAGI CPUである(図4)。今後Armはデータセンター市場に向け、さまざまなIPの単体売りとCSS(Compute Sub System)、そしてCPUチップという3種類の販売を行うことになる(図5)。
そのAGI CPU、2ダイで構成されるチップレットであり、最大136コアの「Neoverse V3」+容量2MBのL2キャッシュという構成(図6)。L3キャッシュは搭載されていないもようである。TSMCの3nmプロセス(N3なのかN3Pなのかは不明)で製造されるが、動作周波数は最大3.7GHzとやや控えめである。もっとも、その分TDP(熱設計電力)は300Wと抑えられており、絶対性能よりも効率を重視しているように見える。
図6 メモリのレイテンシをわざわざここに書くというのは、例えばHBM(広帯域メモリ)などだと帯域は広いがレイテンシも大きくなることを意識してのものだろう。あと“Up to 136”というのは、単に無効化したダイの数を増やすのか、それともチップレット構成を取らない1ダイの製品があるのか、現状では不明である(プラットフォームの互換性を考えると2ダイ製品のみの可能性が高そうだが)メモリは最大でDDR5-8800を12チャネル接続できる(図7)。実際には最大容量6TBという数字もあるが、これだと512GB DIMMが必要になる(が、市場で見たことがない)。現実的には256GB DIMM×12で3TBが上限になるだろう。内部はコア当たり6GB/sの帯域があるとされ、これはおそらく内部で利用されているCMN-700の帯域を指しているものと思われる。
拡張インタフェースはPCIe Gen6/CXL 3.0×96となっており、このクラスの製品としてはやや少なめである(図8)。謎なのはAMBA extension linkで、AMBA CHIをAGI CPUの外に引き出せるように見えなくもないが、その目的は不明である。
図8 アクセラレータを接続するというよりはネットワークカード向けという感じではある。ただCXL Memoryをつなぎ始めるとあっという間に足りなくなりそうな気もするのだが[クリックで拡大] 出所:ArmArmは2025年11月にNVLink Fusionのライセンスを取得しており、NVLink FusionがAMBA CHIの上に載ることを考えると、あるいはNVLink Fusionの接続用か? と思わなくもないのだが、PCIe 6.0を流用するには帯域が足りないのが気になるところである。この辺はもう少し詳細が開示されないと何ともいえない。
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