東電物流が倉庫の出荷数9割を自動化、Mujinのロボットと“割り切り”が実現の鍵物流のスマート化(2/3 ページ)

» 2026年09月10日 08時00分 公開
[森山和道MONOist]

ロボット単体ではなく物流プロセス全体を統合

 MujinのシステムはMujinOS上のWCS(倉庫制御システム)で統合され、東電物流がもともと使っていたインフォセンスのWMS(倉庫管理システム)「ZIZAIA」と連携する。AGVがZIZAIAからのオーダーに基づいて在庫パレットをロボットの前へ運び、Mujinのロボットが荷物を3Dビジョンで認識し、最適な積み付け位置を計算して実行する。

Mujinの知能化ソフトウェアを搭載した積み付けロボット Mujinの知能化ソフトウェアを搭載した積み付けロボット[クリックで拡大]

 積み付けが完了すると、AGVが出荷待機エリアへと搬送する。出荷されるパレットは人間がフォークリフトで搬送する。人手として必要になるのは、このフォークリフト搬送を行う人員1人だけである。フロア全体が自動倉庫のようなものだ。なお、パレットの積み付けを行う「コタツ(ラック)」の状況はリアルタイムで可視化されている。この可視化機能は、作業の停滞を防ぐために東電物流側が要求し、Mujinが開発したものだ。

「MujinRCP」の導入により人員1人での運用が可能になった 「MujinRCP」の導入により人員1人での運用が可能になった[クリックで拡大]

 東電物流におけるMujinRCPの導入で重要なのは、ロボット単体の自動化ではなく、物流プロセス全体をソフトウェアで統合している点にある。アームロボットが物をつかめるだけでは、ケースピッキングは成立しない。どの商品を、どの順番で、どのパレットに載せるのかを計算し、その対象商品をAGVがロボットの前まで運び、ロボットが認識してピッキングし、出荷先に適した状態で積み付ける必要がある。今回のシステムでは、こうした複数の機器と判断処理をMujinOSが統合することで、一つの自動化システムとして動かしている。

このエリア全体がいわば自動倉庫として機能している このエリア全体がいわば自動倉庫として機能している[クリックで拡大]

 あらためて基本情報を押さえておくと、ピッキングや搬送の自動化の対象は、電力設備の工事や保守に使用される多品種の資機材である。これらを出荷オーダーごとに正確にピッキングする必要がある。従来は全て人手で行っていた。重量物を扱う作業であることに加え、資材に関する知識を持った担当者でなければ判断しにくいケースもあり、属人化が進んでいた。また、電力インフラを支える物流である以上、誤出荷を避けるための入念な検品も必要だった。

従来は全て人手でピッキングしていた 従来は全て人手でピッキングしていた[クリックで拡大]

 また、今回の導入は、「新たに導入する固定設備に現場を合わせる」のではなく、「既存の倉庫にロボットを組み込む」という発想で行われている。多品種ケースピッキングを自動化する場合には、自動倉庫や専用搬送設備など、大規模な固定設備を新設することが少なくない。もちろん、東電物流もそういった取り組みは視野に入れているがコストがかかる。これに対してMujinRCPは、アームロボット、AGV、パレットストッカーを組み合わせて、既存の倉庫やWMSを活用しながら自動化する。物量や品目、出荷先が変動する物流現場では、設備そのものを固定してしまうと変化への対応が難しくなるためだ。

 MujinRCPには、デジタルツイン上で設備の稼働状況を可視化し、作業進捗、在庫情報、出荷実績などを一元的に管理する仕組みも組み込まれている。作業者の目視検品に依存していた工程をシステム上で管理することで、検品負荷や誤出荷リスクを低減するとともに、作業実績や設備稼働データを蓄積し、ボトルネックの発見や継続的な運用改善にも利用できる構成になっている。つまり、今回の導入は、自動化と物流DX(デジタルトランスフォーメーション)が一体になった取り組みなのである。

東電物流の中央支社における「MujinRCP」による自動化と業務フローの関係 東電物流の中央支社における「MujinRCP」による自動化と業務フローの関係[クリックで拡大] 出所:東電物流

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