さて、デジタルを前提としたAI時代を迎えモノづくりに関わるさまざまなソフトウェアやシステムも変革期を迎えています。その中で、ヤマハのサプライチェーン変革に関する取り組みを紹介した「ヤマハ物流部が築いた、『Excel地獄』からの脱却と年間200時間削減の舞台裏」が4位に入りました。
サプライチェーンが複雑化し、日々多くの“想定外”が生まれる中、多くの製造業でもいまだに悩まされている「Excel地獄」で分断されたデータを統合データ基盤に移行し、部内の抵抗を乗り越えながら、定着を進めていったという内容です。サプライチェーンマネジメントシステム(SCM)では、将来的に、AIエージェント同士が話し合って調達を自動で決めていく世界観なども描かれており、その前提となる統合データ基盤は重要になると見られています。
一方、同様にデータ基盤の整理という面で注目を集めているのがPLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)システムです。ランキングではものづくり太郎氏による連載「なぜ日本の製造業はPLM構築につまずくのか? よくある失敗事例を見てみる」が7位にランクインしました。ものづくり太郎氏は日本の製造業こそPLMを重視すべきだという考えのもと、なぜそれがうまくいっていない企業が多いのかを事例を含めて分析しています。YouTube同様、切れ味鋭いものづくり太郎節でPLMと日本企業の取り組みを斬っていますのでぜひ連載でもご覧ください。
PLM関連では、ランクインはしていませんが、キャディさんに執筆いただいた連載「AIとデータ基盤で実現する製造業変革論」なども注目を集めており、製造現場までを含めたエンジニアリングチェーンのデータ基盤としてPLMがあらためて重視されていることが分かります。
製造業でも実業務でAIを使う機会も増えていますが、“草の根活動”から成功事例を次々に生み出す取り組みを行っているのがダイハツ工業です。その取り組みを紹介した記事「なぜダイハツ工業では現場発のAI事例が次々と生まれるのか、仕掛け人に聞く」が2025年の10位となりました。
ダイハツ工業 DX推進室デジタル変革グループ長(兼)東京 LABO シニアデータサイエンティストの太古無限氏は、最初に3人で始めた草の根活動を仕組み化し、その取り組みをダイハツ工業全社に広げてきました。ポイントとして挙げていたのが、「誰でも簡単に活用できる仕組みを整える」と「使い方や価値を伝える活動」の2つです。「最終的な目標は、誰もが使える道具とすることだ。価値を広げるためには、技術者や非技術者に関係なく、誰でも簡単に使えるようにしなければならない。その障壁になっているものを丁寧に解決していく。こういう思いは当初から今まで変わっていない」と太古氏は語っていました。
現状ではAIの活用はメールの作成支援や議事録作成など、一般業務にとどまっているところが大半だと思いますが、今後は業界や業務特化型のAIエージェントの整備などが進み、AIを業務内でどのように活用するかが大きなポイントになります。そのためには、AIを前提として誰でも使えるようにする仕組み作りや、社内での普及活動が重要だとあらためて感じました。
さて、2025年の製造マネジメントフォーラムの人気記事トップ10を見てきましたが、いかがだったでしょうか。ある程度、現在の製造業を取り巻く環境や技術トピックが、読み取れたのではないでしょうか。MONOist 製造マネジメントフォーラムでは2026年も引き続き、世界で勝ち残る製造業やモノづくりの在り方を模索しつつ、モノづくり×AIなどのあるべき姿をお伝えしていきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
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なぜダイハツ工業では現場発のAI事例が次々と生まれるのか、仕掛け人に聞くCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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