リクルートは、「半導体関連エンジニア」に関する求人と転職の動向についての調査結果を発表した。半導体関連エンジニア求人はこの10年で12.8倍に増加し、2022年度は「異業種×異職種」からの越境転職が33.6%となった。
リクルートは2023年12月6日、「半導体関連エンジニア」に関する求人と転職の動向についての調査結果を発表した。同調査は「リクルートエージェント」の求人データを対象としたもので、有効回答数は非公開となっている。まず、リクルートエージェントでの半導体関連エンジニア求人の推移を見ると、2013年1-6月期を1とした場合に、2023年1-6月期は12.8倍と大きく伸長した。
求人は2013年から2015年にかけて、ほぼ横ばいで推移していたが、2016年以降は各産業で本格的にIoT(モノのインターネット)化が進み、増加ペースが加速した。その後、 米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症の拡大によって一時的に求人が停滞したが、2020年7-12月期からは大幅に増加している。
2020年以降、通信、ネットワーク機器の需要が急増し、半導体関連工場の国内回帰が見られた。2021年から現在にかけてはEV(電気自動車)、カーボンニュートラルへの移行が本格的に進み、半導体関連エンジニアの人材ニーズがさらに高まっている。特に伸びが大きい地域は「北海道、東北」「九州、沖縄」で、2017年度比でそれぞれ5.36倍、5.21倍となっている。
半導体関連エンジニア求人を「デバイス開発」「製造装置、部品開発」「材料開発」「品質管理、品質保証」の4つの領域別に見ると、2017年度に比べ、「材料開発」は3.64倍、「品質管理、品質保証」は3.41倍、「製造装置、部品開発」は3.1倍といずれも3倍以上増加。特に「品質管理、品質保証」は、2021年度から2022年度にかけて急激に伸びている。要因としては、製品の信頼性評価の重要性が増していること、グローバル標準化の進展、顧客の要求レベルが高まってきていることなどが考えられる。
2022年度の「領域別の求人割合」は、45.3%を占めた「製造装置、部品開発」が最も多かった。次いで「材料開発」(19.8%)、「品質管理、品質保証」(19.3%)、「デバイス開発」(15.5%)となっている。
次に、半導体関連エンジニア職種の求人データをさらに詳細に分析し、半導体関連エンジニア職種での新しいトレンドである「パワー半導体」関連のエンジニア求人を抽出した。その結果、求人は順調に推移しており、2017年度に比べて3.69倍と伸長している。
パワー半導体関連エンジニア求人が増加した一番の要因には、世界各国でEVの需要が高まっていることが挙げられる。また、主力市場はEV向けだが、近年市場が拡大している再生可能エネルギー分野にもパワー半導体が使われており、市場の成長に伴って、再生可能エネルギー分野でも需要が高まるとみられる。
続いて、「半導体関連エンジニアへの業種×職種の異同パターン」の推移から、業種と職種の両方を変更した「異業種×異職種」からの転職割合を調べた。その結果、2017年度は、「同業種×同職種」が33.2%、「異業種×同職種」が23.4%で、「異業種×異職種」は21.7%だったが、2022年度には「異業種×異職種」が33.6%となり、他の3つの転職パターンを上回った。
このように、未経験から半導体関連エンジニアに越境転職する事例も増えているが、経験豊富なミドル層、シニア層(50〜64歳)の半導体関連エンジニアへの転職も活況となっている。2022年度のミドル層、シニア層の転職先の割合は、「総合電機、半導体、電子部品業界」が19.97%と最も高かった。
技術者やITエンジニアの人材派遣を展開する「スタッフサービス・エンジニアリング(SSE)」では、2017年度と比較して、半導体業界の派遣求人が1.68倍に、半導体業界で働く派遣エンジニアの就業者が2.42倍になった。
SSEでは、未経験者でも挑戦できる学習環境を整えており、 2023年2月には半導体製造プロセスの体験型研修を導入している。半導体業界で働く派遣エンジニアの就業者が増えている背景には、このようにリスキリングを前提とした「リスキリング採用」が増加していることも関連していると考えられる。
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