設備投資の経済性計算は、技術的側面と経済的側面から検討を行う必要があります。技術的側面では、機械設備は長期間使用していると故障する頻度も高くなり、維持費も増加するといった老朽化現象が発生するという問題があります。経済的側面では、技術革新によって現在使用している設備より高い性能の設備が出現し、現有設備と比較して不利な状況が発生するという問題があります。
このように機械設備は、使用年数の増加で老朽化と陳腐化の両側面による劣化が著しく進行すると設備の滅却や更新が検討されることになりますが、これを経済的に判定することが必要となってきます。この評価法を「設備投資の経済性計算」といいます。設備投資には、新設や増設のための積極的投資と、設備の取り換えを中心とした消極的投資に区分されますが、後者の方が現状と計画案との比較ですので評価が容易です。評価法は大別すると、次の4つに分類されます。
原価比較法は現有設備と新規設備とで生産を行った場合の原価を比較し、原価の小さい方を有利として選択する方法で、代表的な方法でもあります。
この原価比較法は、設備投資案の比較を年額原価で行いますが、原価低減を目的とした原価に限定し、年額原価の低いものを選択します。原価は、それぞれの企業で異なりますが、年額の原価比較表を作成して比較判断します。
生産設備は、長期間使用しますので一般に耐用年数が設けられています。この間とそれ以降に設備を利用して得られる収益を現在価値に置き換えて、将来の収益の合計で当初の設備投資額をカバーしようとする方法が現在価値法です。その計算式は下記の通りです。
現在価値法による評価=Σ(将来の利益の現在価値)−設備投資金額
投資金額に対する利益の割合を表す評価方法で、計算式は下記の通りです。投資利益率が低い設備よりも、投資利益率が高い設備への投資が有利であるために、複数の投資案がある場合には比較評価を行うことができ、分割投資をする際にも利益配分に応じた分割額の決定が可能になります。
投資利益率=年間利益額÷設備投資額×100%
製造業ではこの方法がよく使われており、投資額をその投資から得られる毎年の収益によって何年で回収できるかを評価します。計算式は下記の通りです。
回収期間(年)=設備投資金額÷投資による年間利益金額
設備投資に費やした費用の回収期間の長さにより投資の可否を判断する方法で、回収期間が短ければ有利であると判断します。現場では個々の生産設備に対して投資額がいくらで、収益がいくらかを把握することは容易ではありませんが、設備の購入金額に対して生産する製品の収益の関係から、おおよその回収期間を認識しながら仕事に取り組んでいかなければなりません。
もう一方の側面として、資金回収期間法は、設備投資の選択法として、投資した金額がその投資から得られる利益によって何年で回収できるかを判定し、期間が短い方を採用する方法です。しかし、当初の予測が狂った場合に備えて、なるべく早く「元を取る」方法を選ぼうという発想であって、最も有利な案を選ぶことを狙ったものではありません。
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本稿では、設備投資計画を取り上げ、設備投資計画の特徴、設備投資の種類、設備投資の分析法、設備投資案のランク付けなどについて説明をしてきました。
設備には老朽化と陳腐化による劣化がつきものです。これらの劣化現象がある限度以上になると採算がとれませんので、設備の丸ごと取替え、すなわち更新が必要になってきます。この場合、設備更新の決定を経済的に判定する方法として設備投資の経済性計算があります。
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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