生産工程で考えるべき「品質」の基本とは? TQCの歴史的経緯などを踏まえながらモノづくりの現場が心得るべき事柄を順を追って解説します。
「IE:現場視点の品質管理」連載では、まず2回に分けて、IEにおける「品質管理」の考え方、心得を紹介していきます。前半(本稿)では、品質管理に求められる意味と効果を、その背景から考えていきます。次回の後半では、品質管理の本質を歴史的背景から探っていきます。
“品質管理(Quality Control)”は、狭義には不良の発生を未然に防止するための統計的論理といえます。しかし、“品質(Quality)”というと一般的には、もっと広い意味で用いられることが多く、例えば、「品質が悪い」という言葉の裏には「値段の割には……」という意味が含まれることもあります。こうしたことから、“品質(Quality)”と“値段(Cost)”は切り離せない関係にあるのではないでしょうか。そういう視点で「品質(Quality)・値段(Cost)」を見ると、「より良い(Quality)製品を、より安く(Cost)より速く(Delivery)製造する」は、モノづくりに携わる私たちが、現在も将来も絶え間なく追求していかなければならない課題であることは疑う余地はありません。そして、この中の1つでも欠くと業績の安定は確保していけません。作った品物が良くなければ信用を失います。安く作らなければ私たちの給与や昇給の原資を失います。納期に節度がなくなれば顧客の信用を失います。従って、私たちは製品を作るだけではなく、作った製品を販売するということの両方が相まって仕事が完了するのだということをよくよく理解しておくことが「現場視点の品質管理」の基本的な考え方です。
企業の存在意義は、“製品を通じて社会に貢献すること”です。世の中の人たちに「製品を使うことで便利になった」と感じてもらい、社会に受け入れてもらうことによって製品は売れていくのです。ですから、モノづくりに携わる私たちは、世の中の発展のために仕事をしているということ、お客さまがあって、初めて私たちの会社が存続するのだということをあらためて認識しなければなりません。
努力をして良い製品を作ればさらに注文が増え、利益を押し上げます。その利益で、設備投資や作業の改善を行ったり、研究を積み重ねてさらに良い製品を作ったり開発したりすることで、顧客からの信頼が増して会社が発展していくわけです。特に、この激しい競争下においては、「より良い製品を、より安くより速く作る」ことに全力を尽くすより方法はないといっても過言ではありません。
中小企業庁編纂(へんさん)の「2006年版 中小企業白書」に掲載されている「発注企業が取引を解消する際に、受注企業に対して不足を感じたニーズ」では、品質の安定性、製品・加工の品質の良さ、コスト削減力、納期の確実な順守、短納期対応力などの項目が上位を占めています。顧客目線からの統計ではありませんが、お客さまがあればこそ、という考えが仕事の本質であることをうかがわせます。
この調査では、とりわけ“品質”に関する項目は際立った特色を示しています。
不良の発生原因を総合的に考えてみると、日ごろの仕事が親切でなかったり、考えが足りなかったりと、ほんのちょっと気を付けておけば済むことで大切なお客さまを失ってしまうことがあります。私たちが消費者の立場でも、ある店から買った品物が不良品だったなら、二度とその店を訪れる気がしません。
ものを作るときに注意を怠ってはならないことは当然のことですが、メーカーとして最も大切なことは、製品の性能が優れていることはいうまでもありませんが、品質が良くて事故がないことと、新しい技術を開発して時代の要求に応えていくことだと思います。その実行の一助として、より実践に即した「現場視点の品質管理」について分かりやすく説明をしていきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.